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10/02/13 放送 バックナンバー
日本経済は復活できるか?
ゲスト:桃山学院大学経済学部教授 望月和彦さん
聞き手:上田 剛彦アナウンサー・八塚 彩美アナウンサー
金融業の国アメリカ!金融危機の影響はまだこれから?
バブル崩壊後日本の景気は停滞、アジアの経済は発展!
10年以上「昼寝をしたウサギ」だった日本経済
日本経済復活のカギは「子どもを安心して産める社会」づくり
 去年秋以降、各経済指標が好調で景気が再び底割れする「二番底」の心配は和らいできたというエコノミストもいます。しかし、春闘のニュースを見ても、私たちの給料はどうも上がりそうになく、相変わらず財布の紐を緩めることができません。
 景気はホントに大丈夫なのでしょうか? 
今週は桃山学院大学経済学部教授の望月和彦さんに、日本の景気と経済の行方について伺います。
■金融業の国アメリカ!金融危機の影響はまだこれから?

 今日は気になる経済のお話をうかがいたいと思います。私達はどうも不景気という感じがしますけれども、いろいろな数字を見ていると、例えば鉱工業生産指数は、前の月に比べて上昇するとか、それからアメリカ経済も去年の10〜12月期は好調だったりとか、どうも上向いてるような空気も出てきている気がするのですがどうでしょう。

 「そうですね。昨年末のアメリカの経済成長率は年率で5.7%ですから、結構好調ということになりますよね。また失業率もいま少しだけ低下しているということですが、おそらくこれはアメリカ政府の景気対策の効果であって、問題となっている住宅市場は冷え切ったままなのです」

 そもそも金融危機の元となった住宅ですね。

 「いわゆるサブプライムローンと言われるものですけども、その住宅の着工件数もピーク時のまだ4分の1ですし、住宅ローンの延滞や差し押さえも増えているわけですから、結局サブプライムローンの不良債権化は止まっていないと言えるわけです」

 いまのはアメリカの話で、アメリカは全然サブプライムローンの問題から危機を脱していない。

 「そういうことです。この問題が起こって、アメリカ政府とか中央銀行=FRBといわれるところが大量の資金を供給して、銀行をつぶさないようにということで、お金を貸したわけです。ですからいまの銀行にはお金はあるわけです。お金はあるから、とりあえず支払い不能になることはありません。
 ところが、不良債権を持っている。不良債権を処理しなければならない。不良債権の処理をしようと思ったら、自己資本がなくなっていきますから、最終的には倒産というリスクはあるわけです。だから証券価格が暴落して、本当に金融機関が潰れるまで、かなりのタイムラグがあるわけです。日本の場合だったら、1991年にバブルが崩壊して、1997年に山一證券とか大手の証券会社や銀行が潰れていく。つまり6年間かかるわけですね」

 そういわれてみればそうですよね?

 「その間タイムラグがあります。その間ずっと銀行も頑張るわけです。ある程度頑張るのだけれども、最終的には資本がなくなってしまって」

 持ちこたえられなくなってしまう?

 「はい」

 となると、いま私たちは本当に近々の数字だけを見て、良くなった悪くなったと考えるべきではないですね。アメリカを見ると。

 「そういうことになります」

 あの金融危機、サブプライムローン問題が発生しましたけども、そもそもあの金融危機に至ったのは、どういうことなのだろう。なぜ世界的な恐慌的状況になってしまったのだろうとひとつ思うのですが。

 「これについては、まずアメリカの貿易赤字の問題があるわけですね。1980年代くらいから巨額の貿易赤字をアメリカは出し続けているわけです」

 いわゆる双子の赤字と言われていた財政赤字と貿易赤字。

 「そうですね。貿易赤字を出すということは、ものを買うのだけれども買うお金がないから、借りるわけです。つまり赤字国というのは、黒字国からお金を借りないと貿易赤字(を穴埋めして財政の安定)が維持できない。ということは、借りたお金を今度は何らかの形で運用して返さなければならないということになる。
 いまのアメリカは巨額の貿易赤字を抱えておりますけれども、それ以上の資金を世界中から集めているわけです。サブプライムローンみたいな複雑な金融工学のテクニックを使って、いろいろ有利な金融商品を使ってそれを全世界に売りさばいているわけです。それでアメリカは儲かっているわけです。アメリカの主要産業は、いまでは金融産業、金融業です」

 たとえばアメリカといいますと、自動車を造って売ったりとか、それからものづくりとか。農業もあるでしょう?と思うのですが。

 「アメリカの国内総生産に占める製造業のシェア・割合は12.9%しかありません」

 たったそんなものですか?

 「そんなものしかないです。逆に金融、保険、不動産のシェアは、33.1%です」

 3分の1ですか!

 「いまのアメリカというのは、世界中から資金を集めているのです。国内とか国外に投資をして、高い収益を得て儲かっている。だからアメリカの企業収益の半分は金融業が生み出しているのです」

 企業もそうですか。では金融危機というものは、アメリカのそのような金融業に頼っていた体質が生み出してしまったと言える。

 「いまアメリカは、次から次へと新しい金融商品を作って売りさばいていかなければならない。でないと人からお金を借りる事ができなくて資金を集めることができない。そのような状況に陥っているわけです。その中から、サブプライムローンというのも出てきた」

 まだまだアメリカの話をしますけども、となるとその構造はなかなか変えられないものだと思うので、今後もそのような主義を貫いていかなければ、アメリカはやっていくことができないですよね。

 「本当はそうだと思います。でもいまオバマ大統領が金融業に対して規制をかけようとしています。これがどんな影響を及ぼすのか。つまりいまのアメリカは、金融大国ですから、金融業が主流なものですので、その金融業の活動に対して制限を加える。それが果たしてどのような効果をアメリカ経済にもたらすか。もしかすると、アメリカの強みをわざわざ捨ててしまうことだってありえるのです。そこは心配の種ですね」

 先日アメリカの議会では、大もめにもめていましたね。

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■バブル崩壊後日本の景気は停滞、アジアの経済は発展!

 今度は、日本の話にもっていきますと、一方でそのようなアメリカ経済、世界経済に対して、日本経済は以前からどのように変わってきたと言えますか?

 「後でもまた申し上げますけれども、日本経済は、1991年以降バブルが崩壊して、ずっと長期停滞局面にあるわけです。バブルの時も『これから日本経済は内需主導でいきましょう』という前川レポート(1985年に日本銀行の前川総裁が今後の経済政策を提言したレポート)というものが出て、輸出に頼らない経済をつくっていくと言っていたのですが、実際には全然内需転換はできなくて、輸出主導でずっとやってきたわけです。
 アメリカはいろいろITバブルや住宅バブルなどを作り出して、何とか金をかき集めてどんどん消費してくれるものですから、日本や中国、他のアジア諸国などは、アメリカに対して輸出をして、それで景気をよくしようとしてきた。中国とか東南アジアの国々は、それで立派に経済発展してきたわけです。その構造は変わらないまま。もっともかつてとは違いまして、むかし経済発展に成功したアジアの国は日本だけだったんですよね」

 そうですね。以前ですね。

 「ずっと前は。ですから日本は、かつてヨーロッパみたいに水平貿易はできないと言われていたんですよ」

 周りの国とお金を回すことができない。ものを回すことができないと。

 「ヨーロッパだったら、ドイツもあるし、フランスもあるし、イギリスもあり、イタリアもある。同じような産業構造ですね。工業化が進んでいる。同じ自動車を輸出したり輸入したりしているわけです。域内貿易というのは、ものすごくウエイトが高いですから。
 でも日本は自分だけが工業国で、あとは工業国でなかったものですから、ヨーロッパみたいな貿易のパターンができなかったわけです。ところがいま、韓国も台湾も中国もみんな経済発展してきて、だんだん工業製品を輸出、貿易するような状況ができあがっているわけです。
 いま完全な水平貿易にはまだなっていませんけども、例えば対米輸出をする。基地は中国にある。中国からアメリカに輸出するのだけども、そこの中国で作っている製品の部品はどこからくるかというと、東南アジアからやってくる。その製品をつくる機械はどこからやってくるかというと、それは日本からやってくるということで、アジア圏で対米輸出を目的とした生産ネットワークみたいなものができあがっているわけです」

 なるほど。少し日本経済についての話が出たところで、この後、気になる今後の日本経済について、もっともっと詳しく伺っていきます。

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■10年以上「昼寝をしたウサギ」だった日本経済

 さて私達、どうも不況というか不景気というか暗い気分から抜け出せません。いま日本経済がかかえる最大の問題は、先生何でしょうか?

 「要するにそれは経済成長しないことですよね」 

 経済成長。

 「つまりずっと不況が続いているということですね。いまの日本の国内総生産は、いままで世界で2番目だったのですが、今年中国に抜かれて、3位に転落するのは確実ですよね。いままで2位だったものが3位です。
 ちょっと転落したかなという気がするのですが、実はもっと転落しているのは、1人当たりの国民所得。経済発展を計る主な指標になっているのが、1人当たりの所得ですけども、これを見ると日本の凋落は明らかになるのです」

 2位か3位というレベルではないのですか。

 「かつてそうでした。1995年には、日本はルクセンブルグ、スイスに次いで第3位だったのです。つまり3番目に豊かな国だったのです。ところが2007年になると、OECD(経済協力開発機構)、つまり先進国クラブみたいなものです。OECD加盟国30カ国中19位です」

 19位。私達の上にもっともらっている人達が18ヶ国もあると。

 「そういうことです。当然その中にはアメリカも入っていますし、イタリアを除くヨーロッパの主要国、そしてシンガポールもあるわけです」

 アジアの中でも一番ではない。なぜそんなことになってしまったのですか?

 「われわれは全然経済成長しなかったのです。その間、20年近く経済成長をほとんどしていない状況。その間他の国々は経済成長をしているわけですから、どんどん抜かされていくわけです。私達はうさぎとかめのお話のうさぎであるわけですね」

 うさぎは飛び起きたらまた走るのですが、日本という国が今後飛び起きて走ることができるかどうか。ではなぜ経済成長しなかったのかというところではどうなのでしょう?

 「これは政府の経済政策に誤りがあったのではないか、と思われるところですね。
 またこれは全く証明はできませんけども、ずっと停滞をし続けると、人間の心も萎縮してしまうといますか、目標がどこかなくなってしまいましたよね。坂の上の雲ではないですけども、坂の上の雲というのは、雲を目指して登っていくんだというもの。ところがいまの日本人は、坂の頂上まで近づいたと思うのだけど、まだ途中なのにどこか「あれっ」という雲がどこかに行ってしまったというような状況」

 あの雲はどこに行ってしまったのだろうと。

 「そうそう、そんな感じですよね。だからもう目標がどこかに行ってしまった」

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■日本経済復活のカギは「子どもを安心して産める社会」づくり

 一番の問題点は、経済成長しなかったことと考えることができるのですが、もう1つ日本経済でいま不安に思っていることが、将来なんです。今後私達はお金を貯めていったらいいのか、それともいまあるのを使ったらいいのか。何をしたらいいのか。八塚さんはいま23歳で、今後日本経済を担っていかなければならないですが、漠然とした不安とかないですか?

 (八塚)確かに会社がこのままずっとあるのかとか。

 そんなざっくり怖いことを言いますけれども、でも本当に正直この会社のスタジオでしゃべっていながらも、この会社があるのかということすら不安に思ってしまうような漠然とした不安感があるのですよね。

 「これはいろいろな不安があると思います。つまり雇用不安であるとか、年金に対する不安であるとか、政府の財政は一体どうなるのか、そんないっぱい借金を抱えてどうなるのだろうかという不安ですね。そういう不安があるものですから、子どもを生んで育てようかという気にも、ちょっとならないかなというところもあるかもしれませんね」

 実は私、結婚していまして、でも子どもはいないです。今後のことで思いますと、子どもをつくって育てるということに対する不安があるのですよ。共働きなので、その分妻は働くことができなくなる。そうなると所得が半分になるのではないかとか、それが不安なのです。
 大阪市内に住んでいると、どこに子どもを預けて、どのようなライフスタイルを送ることができるのか。これも不安です。とりあえず生もう、とりあえず育てようという気にならない。

 「そうですね。ライフスタイルが多様化したとよく言われますので、いろいろなライフスタイルがあって。昔はそれなりの年齢になったら、もうみんな結婚しなさいとか言われて、子どもを作ってと、同じようなライフスタイルを選んできたわけですけども、いまはいろいろなライフスタイルがありますよね。
 ですから、どのような生き方をしても自由だとなっていますので、いろいろな生き方がある。その中でだんだん格差も感じるようになるという状況になっていますね。
 でもいま私達が直面している一番の問題は、やはり子どもがいない。少子化の問題だと思うのです。例えばいまおっしゃったように、託児所、保育園が決定的に不足しているわけです。安心して子どもを生み育てるという環境が、実はできあがってないわけです。
 国の予算だってそうです。少子化対策をやっていると言いながら、社会保障費の中で少子化、子どもに使うお金だってそんなにたくさんはありません。おそらく1割もないのではないでしょうか」

 えぇ!たった1割!

 「だと思います」

 子どもというのは今後の日本を背負っていく世代、人達ですよね。そこに対してほとんど使っていない。

 「はい」

 これは他の国と比べるとどうなのでしょうか。

 「それは日本の方がずっと遅れていると思います。一番良い例は、学校、教育ですね。いま日本の小学校というのは、40人学級が基本です」

 はい。

 「いまそれを35人にしようと言っていますけども、外国では20人というのが当たり前。これだけ学級規模が大きいのは、日本と韓国だけだと言われています。それだけ我々は、子どもにお金をかけていません」

 でもその分先生の数は、外国では2倍であったりとか。

 「そういうことです」

 ということは、公務員の人達の給料も発生しているわけで、その分お金を割いていることになるわけですね。

 「ですから、その分将来世代のための投資をしているわけです。我々はその投資を怠って、別のところに使っている。いままでだったら公共事業にたくさんお金を使っていたことになるわけです。その結果、ずっと子どもの数は減り続けているわけです」

 いまの公共事業にすごくお金を使っていた。それを子どもにということで言えば、いま民主党政権が掲げている、ものから人への流れと合致していますね。

 「合致しておりますし、民主党政権は子ども手当てであるとか高校教育の無償化であるとかも言っていますね。でもそれが果たして少子化に対する歯止めになるか、となるとどうでしょうか。それだけでみんな子どもをつくるようになるかというと、ちょっと疑問だと思うのです。やはり子どもをちゃんと育てることができるような環境をつくることが、まず先決ではないかと思うのです」

 確かに私のことで言えば、だからといって、お金をもらえるから、もしくは高校が無料になるからといって、子どもをつくろうという話しでは全然ないですからね。

 (八塚)働きながら育てられるという環境作りが。

 「安心して、子どもを育てることができる環境をつくらなければならないです」

 子どもが増えると経済的には大きいですよね。

 「そうだと思います。子どもができれば、それだけ消費は増えますので、いまなんかエコカーとかエコポイントとかいろいろ言っていますけど、そのような政策よりも子どもをつくる政策をやって、みんなでお金を使ってもらう。子どもには当然お金がかかりますから、否が応でも消費は増えるわけですからね。
 子どもというのは、単なる消費の対象だけではなくて、実は投資の対象にもなるわけですね」

 投資の対象?

 「これは社会にとって子どもというのは将来、労働力になるわけですから、社会にとっては投資なのです。子どもができるというのは、投資しているということになるのです。
 20年経てば労働力となって、生産、経済成長に貢献してくるわけです。だいたい歴史的に見ても、人口成長と経済発展というのは、同時並行です」

 先生、ざっくり言ってしまって非常に申し訳ないのですが、となると1番の経済政策は子づくりですか。

 「そういうことですね」

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