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07/04/24〜07/04/28 放送 バックナンバー
小児ガンの子供たちのために、夢の病院を募金で!2
ゲスト:大阪大学医学部付属病院医師・楠木重範さん

聞き手:戸石伸泰記者
 
誰でも小児ガンになる可能性はあるということ
『悪いことするなら、お医者さんに注射してもらうよ!』
求めるのは、日常の当たり前の生活ができる施設
ノウハウや人材、患者さんを1ヵ所に集約したら
5月12日はカエル募金箱を持って万博公園に!
 15歳以下が発症する小児ガン。この病気には、免疫力が低下したり、入院が長期になったりする特有の難しさがあります。以前もこの番組でお伝えしましたが、この小児ガンの専門病院を、市民の寄付によって大阪に建てようと活動しているNPOがあります。そのNPOチャイルド・ケモ・ハウスが、5月12日の土曜日、万博記念公園でチャリティー・イベントを開くんだそうです。今週は、大阪大学医学部付属病院のお医者さんで、NPOチャイルド・ケモ・ハウス理事長の楠木重範さんにお話を伺います。
■誰でも小児ガンになる可能性はあるということ

 まず、小児ガンというのはどんなものなのですか? 大人のガンとの違いは?

 「小児ガンで一番有名なのは白血病ですね。血液のガンと言われているものです。それともう1つは固形腫瘍という塊の腫瘍があります。この2つに大きく分けられます。
 で、大人のガンとの大きな違いは、一番は治りやすいという所です。すべてを含めて7割から8割は治ります」


 治るというのは完治、根治するということですか?

 「そうですね。大人のガンの場合は、治ると言っても薬を飲みながら、ガンを持ちながら、共存しながらというのがほとんどなんですけれども、子供の場合は完治で、その子供が大人になった場合には、当然抗ガン剤などは飲んでいない状況になります」


 何故でしょうね? 子供の細胞が成長の過程にあるからということなんでしょうか? 

 「そうですね、一番は、簡単に言えば子供が強いということですね。要するに、ガン細胞をやっつけようと思うと、抗ガン剤を大量に使えば使うほど当然治ると思いますよね。その通りなんですが、大人の場合は、抗ガン剤を使えば使うほど、副作用の臓器などへの負担がかなりかかってきますから使えないという現状もありますが、子供の場合は、各臓器が真っさらと言うか元気ですから、多少多い量の抗ガン剤を使っても大丈夫と言うか、必要なだけの抗ガン剤が使えると考えてもらうとわかりやすいと思いますね」


 小児ガンは治るということですが、どんな治療が有効なのですか?

 「抗ガン剤を使う治療のことを化学療法と言いますが、化学療法だけで治るものもありますし、当然、手術で取ったら終わりというものもあります。で、場合によっては、骨髄移植とか、比較的強い治療をしなければならない病気もあります。ピンからキリまで様々な病気がありますね」


 現在、日本の小児ガンになる子供の数、確率は、意外と知られていませんが、一般的な病気ということですが?

 「私たちは、大学病院に勤めているということもありますが、専門病院の中ではかなり多いと言いますか、例えば小児科の専門施設であれば、各病棟の半分くらいは小児ガンの患者さんだったりとかいった状況ですね。
 大体15歳以下で、毎年約1万人に1人が小児ガンになると。
 以前、私たちのところに募金をしてくれた被昇天学園という学校があるんですけれども、、小児ガンになる確率を聞くと、皆さん高いという印象ですね」


 子供が罹る様々な病気はありますけど、そのうちの1つだということですね? 特別な病気ではないんですね?

 「そうですね。私たちの書いているブログに、元の患者さんがこの前メッセージを書いてくれたんですね。『ただ病気になっただけの僕ですが』という非常に良いコメントがあって。正にその通りなんですよね。本当に運悪くと言うか、偶然なっただけというだけのことで。
 まあ、誰でも風邪はひきますよね。風邪ならそんなに大げさではないですけれども、それぐらいの感覚でいてもらえたらと。
 私たちが一番困るのは、やはり家系がどうこうとか、『うちの家系には、そんなガンの子供はいない』とか、そんなつまらない問題が出てくるんですけれども、誰にでも小児ガンになる可能性はあるんだということをまずは認識して欲しいというのはありますね」

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■『悪いことするなら、お医者さんに注射してもらうよ!』

 小児ガンという病気が、差別されているという悲しい現状がありますね?

 「そうですね。これは、かなり無意識なところからだと思うんですけれども、例えば小学校の時に白血病になったとしますよね。その時、周りの親御さんとかに『うちの子、白血病やったんよ』と、すっと言えるかというと、何となく言いにくい雰囲気とかないですか?」
 

 あるかも知れませんね。

 「タブーにかなりなっている所がありまして、よくわからないから、髪の毛が抜けている子供を見ると、質問されても(自分の)子供にどう説明して良いかわからないと。そういう雰囲気を子どもは察知しますので、そのことについて触れようともしないですし、そうするとギクシャクしてくると。そうではなくて、もし同じクラスでそのような子供がいたら、そのことについて皆で考えようと。前向きに向き合っていけば、非常に教育的にも良いかなと個人的には思っているんですけれども」


 もしクラスにそういう、調子が良くなって学校に出てきた子が、抗ガン剤治療で髪の毛が抜けてしまっていた場合には、子供のことですから冷やかしますよね?

 「ええ。ですから子供が『何故あの子は髪の毛が無いの?』と聞いてきた時に、親がきちんとした理由を説明してあげないといけない。
 で、それは、今は単に小児ガンの話ですけれども、他の病気のことも全部そうですよね。ですから、世の中には意識していなくてもそういう偏見があると言うか、病気になることが悪いことのようななんとなく風潮があると。
 その最たるものが、親御さんは無意識だとは思うんですけれども、『そんなに悪いことするんだったら、お医者さんに行って注射してもらうよ』と(笑い)。お医者さんは、皆、別に注射は罰としてしているのではなくて、その子を治してあげようと思ってやってあげているんですけど、でも、そういうことを言ってしまうところが日本にはありますよね。これは、ちょっと止めてもらいたいですね(笑い)。差別どうこうと言うのではなくて、ちょっと考えてくださいと言いたいですね」


 お医者さんの立場だったらそうでしょうね(笑い)。髪の毛が抜ける子供たちの例がありましたけれども、カナダで、そのことで傷ついた子供を友人が救うことをしたという有名な話があるそうですが?

 「イワン君という小学生の男の子がいまして、急性白血病になったんです。入退院を繰り返して、元気になって学校に戻ってきたわけです。でも、治療のために髪の毛が抜けてしまったんですけど、多感な時期の小学生の彼は、恥ずかしいながらも決心して、行ける時には学校に行っていました。
 ところが、心無い児童がからかったりバカにしたりしたんですね。そのためにイワン君は、次第に学校に来ないようになったんです。
 そんなある日、イワン君のクラスメイトの1人が、母親に頼んで、自分の髪の毛を剃ってもらったんです。で、スキンヘッドで登校してきたんです。イワン君のことを思って、イワン君と同じ姿になることで、イワン君の気持ちを少しでも理解して、いじめも分散するのではないかと。
 で、このことに共感した数人のクラスメイトが、同じように髪の毛を剃ってきた。その次の日には、また数人の生徒が同じように髪の毛をという具合に、結局はクラスの男子全員が髪の毛を剃って、その皆がずらっと並んだ映像が、アメリカのCNNテレビで流れたということです。
 で、そのクラスからは完全にいじめはなくなったということなんです。こういうことは、教育的にものすごく良いことかなと思いますし、最初に『髪の毛を剃って』と言った子供に対して剃ってあげたという親も偉いなと思いますね。自分が親だったら『そんなことはしなくて良い』とか『あなたもいじめられるわよ』と言いかねないような。
 でも、この時期の子供は、カッコイイことにものすごく憧れると思うんですね。だから本当のカッコよさとはこういうものなんだということを、できれば私たちがしていることに対して(親御さんに)少し興味を持ってもらって、多感な子供さんに話しかけてあげると。子供の頃から小児ガンに対してあまり偏見が無いと、大人になってもありませんから。そういうことも、我々の活動としては知ってもらいたいことの1つなんですね」

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■求めるのは、日常の当たり前の生活ができる施設

 阪大病院では、小児ガンの患者を何人ぐらい受け入れていますか?

 「入院患者は20人前後です」


 大人のガン患者に比べて、子供のガン患者の方が、実は細胞とか臓器が強くて、強いから規定量の抗ガン剤を使えて、化学療法は有効だということですが、治療は苦しいこともあると思います。子供の患者の日常はどんなものですか?

 「確かにしんどい時もありますけど、ほとんどは皆さんが思っているよりは元気ですね。一言で言うと退屈。
 もう1つは、付き添いの家族のプライバシーが無いですよね。例えば個室で入院しているとします。横の付き添いベッドでお母さんが寝ているわけです。そうして看護師さんが、朝、採血なんかでガラッと部屋に入ってくるんですけど、起きていれば問題はないんですけど、当然起きていない時もあるんですね。奥さんが寝室で寝ていて、突然ドアを開けると怒りますよね。それが日常になっているんですよね。カーテン1枚でもあったら違うとは思うんですけど。そういうことも、私たち病院の人間は麻痺しているのであまり思わなかったんですが。
 チャイルド・ケモ・ハウスのメンバーに入っているお母さんが、入院した時のエピソードとして話してくれたのが、たまたま朝忙しくて、ちょっと早めに研修医が採血に行ったんですね、そうしたらお母さんがまだ寝ていて化粧をしていなかったので、『早く来るんだったら、そう言っておいてもらわないと化粧もできない』って、本気で研修医に怒ったと。確かにそれはそうだと(苦笑)」


 プライバシーの問題とか患者側に立つとそうなると。子供が退屈なのは、小児科なら入院している子供同士で触れ合うスペースはありますけど、抗ガン剤治療を受けている小児ガンの子供の患者にはそれができないのですか?

 「できないと言うか、親御さんには不安な環境だと思うんですよね。『感染が怖い』といつも言われているわけですから。
 例えば市民病院などでは、腸炎、肺炎、インフルエンザとかの感染症の患者がほとんどです。その中で化学療法をしている患者さんが入院している場合があって、そうなると当然個室から1歩も出られないです。それが6ヶ月とか長期の入院になって、元気ならそりゃ退屈になりますよね。
 今でも、朝起きて、まずは任天堂DSやDVDを見るとうパターンで、それはどう考えても不健康な生活ですね(苦笑)。
 だから、我々が求める施設は、良いことばかり、ホテルみたいに豪華にしてあれもこれもと言っているのではなくて、日常の当たり前の生活をしようと。単純に言えば、子供たちは、広いスペースがあったら、それだけで満足なんですよ、小さい子供は特にですけど。本当に一番良いのは、大人が関与しない子供たちだけで遊べる環境ですけど」


 やはり生き生きすると、結局小児ガンに対しても、ひょっとしたら有効かも知れませんね?

 「気分が良いとごはんを食べますよね。毎日部屋に閉じこもっていたら、おなかが減らないので食べませんよね。だから食べない子供には高カロリーの点滴をしなくてはいけなくなって、悪循環になるんです。
 食べる子供は、やはり強いですよ。食べると腸も鍛えられて、体も良い状態に持っていけるので、そういう子供は、治療のしんどい時はありますけど、その後の回復は早いですね」

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■ノウハウや人材、患者さんを1ヵ所に集約したら

 現在の国内の小児ガン治療施設の問題点は、どういうところにありますか?

 「まず小児ガンの子供たちが、どこで治療を受けているかということですが、1つは、大学病院とかの専門施設、もう1つは市民病院などの一般病院です。
 市民病院の場合の問題点は、感染症の患者さんも一緒に入院していますので、子供の患者さんは個室に閉じこもっていないといけない。要するに隔離されていないといけないという状況になっていますから、6ヶ月の入院で当然ストレスもたまるわけです。
 あとは、病院側から見ると、市民病院に血液腫瘍の治療経験のある医療者が1人いれば良いですけど、小児ガンの場合は病状が急変することがあるので、1人では辛いと言うか、結構、責任がどしっとのしかかってくるので。どんなに元気な子供の患者さんでも、そういう患者さんを主治医で見ていると、なかなか医療者はつらいと思いますし、私はその責任を1人で背負える自信は無いですね。
 大学病院の場合は一言で言うと、かなり大病院ですから、融通がきかないというのが一番の問題点かなと思いますね。その最たるものが画像検査ですけど、子供の患者さんはじっとしませんよね。子供の患者さんが納得して、心の準備ができた時に検査ができると一番良いんですが、そうはいきません。次から次へ『時間になったから検査に来て』と言われると泣き叫ぶので、注射で鎮静剤を使わなくてはいけないということになります。これも麻痺している状況なんですけれども」


 だからこそ、チャイルド・ケモ・ハウスという専門病院が必要なんだということですね?

 「そうです。まず患者さんの環境から考えると、今、言ったように、小児ガンの患者さんだけであれば、感染症などについては、当然、皆、チェックしていますので、うつるようなことはなくて、施設中を動き回れる環境を提供できるということですね。
 あとは、そういう患者さんばかり集まっている施設には、医師だけでなくて、看護師や保育士など、子供の患者さんの心のケアをできるスタッフの人材育成もできればと思っています」


 市民病院などに患者が点在されると、医療者も点在すると。最近は、小児科医が少ないと言われていますので、少ない人数になってしまいますね。少ない医療者で、容態が急変する可能性のある患者を診る大変さを考えると、ノウハウや人材、患者さんを1ヵ所に集約したら、かなり効率的に病気と対峙することができる?

 「長期入院になりますので、それだけでも患者の家族の生活は一変するわけですね。
 ですから、私たちの作りたい施設というのは、一言で言うと、患者の家族の皆さんが、病気のこと以外に悩む必要がないような施設を作りたいと思うんです。理想の病院というのが『チャイルド・ケモ・ハウス』という名前にも込められています」


 『ハウス』という部分、つまり『家』ですね?

 「朝、子供が起きたら、ちゃんと洗面所で顔を洗って、小学生なら『行ってらっしゃい』と言って、病院内の院内学級に送り出してあげて、乳幼児の子供なら、プレイルームを作って遊ばせてあげる環境を作って。子供同士が遊んでいる場合は、ちょっと遠くで様子を見て、患者の親たちがコーヒーなんかを飲みながら井戸端会議をしてもらったり、場合によっては我々に相談に来てもらうのも構いませんし、皆でごはんを食べたりできて」

 チャイルド・ケモ・ハウスはそういうことができる病院なんですね。

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■5月12日はカエル募金箱を持って万博公園に!

 大阪の茨木市、彩都という所に、一応建設の候補地は決まっていて、施設を募金で建てようということで8億円のお金を集めようと募金活動をされていますが、所管する厚生労働省や自治体、医学界の反応はどうだったんですか?

 「大阪府や厚生労働省など、色々な所に話は持って行っています。基本的にはコンセプトやプロジェクトには賛同してもらっています。あとはどれだけ具体的に話を進めていくかということですけど。
 次に医学界ですが、阪大病院でも、当然、偉い方々に話を持って行っていますが、皆さん賛同してくださって、阪大病院に勤めながら私がこういう活動をすることに関しても非常に協力的にしてもらっています。
 今後、色々な人の協力が必要だとは思うんですけれども、こういうことはやはり世論と言うか、皆さんの一人一人の声が本当に大きくて、私自身びっくりしているのは、インターネットのブログでの反響がかなりすごいということです」


 募金のためのチャリティのイベントを、5月12日の土曜日に大阪府吹田市の万博記念公園で行うんですよね? どんなイベントなんですか?

 「今回、チャイルド・ケモ・ハウスとしては2回目のイベントになるんですが、『テリー・フォックス・ラン&チャイルド・ケモ・ハウス』と題して行います。
 『テリー・フォックス・ラン』とは、カナダにある有名なガンのためのチャリティマラソンなんです。実は日本でも、既にもう10年ぐらい活動がありまして、元々はカナダで、18歳で足のガン、骨肉腫と診断された人がいまして、その人が片足を切断して義足になったんです。その人がテリー・フォックスという人なんですけど、ガン患者への勇気と希望を与えるために、その治療・研究の費用を集めるために、義足で走ってカナダ大陸横断に挑戦したんですね。これは世界的にも有名な話なんですが、これが日本でも、今までは三重県を中心に大阪や奈良で行われていました。そのラン・イベントと、私たちチャイルド・ケモ・ハウスの『チャイケモ・ウォーク』というイベントを合体したイベントを行います。 
 『テリー・フォックス・ラン』の方は、参加費としては、大人1人1000円で、万博記念公園から大阪市の大阪城公園までの約20キロのコースを走ります。
 で、『チャイケモ・ウォーク』の方は、万博記念公園内の2キロを歩きます。また、私たちのブログで、カエル貯金箱というのを載せています。ブログ上のカエル貯金箱の作り方をパソコンにダウンロードしてもらって、紙にカラー印刷してもらいます。それを切り抜いて組み立ててもらうと簡単に可愛らしいカエルの貯金箱ができ上がります。それに募金を集めてもらって、イベントに来られない人にも、趣旨に賛同してもらって募金してもらって、イベントに行く人に託して会場に届けてもらえればと思います。できれば万博記念公園のイベント会場をカエルの貯金箱でいっぱいにしたいなと思っています」

 チャイルド・ケモ・ハウスが開くチャリティー・イベント『テリー・フォックス・ラン&チャイケモ・ウォーク』は、5月12日(土)、午前10時から万博記念公園、太陽の塔東側の下の広場で受付開始、10時半スタート予定です。
 参加費は、大人一口千円、子供は無料です。
 詳しくはファックスでお問い合わせください。番号は、072-625-4802です。
 夢の病院建設にむけて、たくさんの方のご参加をお願いします!

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