06/05/16〜06/05/20 放送 バックナンバー
世紀の悪法か、国際犯罪に対する有効兵器か? 共謀罪法案
ゲスト:弁護士・永嶋靖久さん
日本の刑法の大原則をひっくり返す『共謀罪』
『きつい冗談』や『目配せ』でも成立してしまう『共謀罪』
条約が適用範囲にしているのは国際マフィア犯罪
政治的ビラを配っただけで逮捕される時代に『共謀罪』
反対世論の盛り上がりに、与党強行採決に踏み切れず
 犯罪を実行しなくても事前に相談しただけで罪に問える『共謀罪』をめぐる与野党の攻防が国会で白熱しています。元々は麻薬の密輸や人身売買など多国間にまたがる犯罪を防ぐ為の国際条約が求めている法律ですが、今審議されている法律に対しては、戦前の思想弾圧につながりかねないという声が市民運動や法律家から出ています。今週はこの『共謀罪』に反対している大阪弁護士会所属で枚方法律事務所の永島靖久弁護士にお話を伺います。
■日本の刑法の大原則をひっくり返す『共謀罪』
 『共謀罪』とはどういう罪なんですか?

 「法律案の正式名称で言うと『犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処する為の刑法等の一部を改正する法律案』という長ったらしい名前で、さらにその中の『組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律』を一部改正するというものなんです。
 簡単に言うと、『組織的犯罪処罰法』という法律に、もう1つ『組織的な犯罪の共謀』という条文を加えるというものですね」


 『組織的な犯罪の共謀』って、具体的にはどういう事になるんですか?

 「まず、そのお話をする前に、『既遂』と『未遂』という言葉をご存じだと思うんですけど、その話を。
 例えば『殺人』だと、『人を殺した者は死刑又は無期もしくは5年以上の懲役に処する』という風に法律でなっているんですね。で、相手を包丁で刺して殺したら『既遂』、刺したけれど死ななかったとか、振りかざしたけれど止められた、あるいは自分で止めたら『未遂』になりますよね。
 犯罪と刑罰についての法律をひとくくりに刑法と言いますが、日本の刑法では、処罰されるのは現実に結果が発生した『既遂』に限って処罰する、これが大原則なんですね。
 『殺人罪』は重いから『未遂』も処罰するときちんと法律に書かれているんですけど、例えば皆さん御存知の罪で『公務執行妨害』とか『名誉毀損』、それから『住居侵入』等では『既遂』は処罰されても『未遂』は処罰されない。『未遂』の処罰というのは、日本の刑法では例外なんですよ。
 で、さらに『未遂』の1つ前を『予備』と言うんです。『殺人』だと、包丁を買いに行くような行為を『予備』と言うんですけど、刑法だと、『放火』『殺人』『身代金目的の誘拐』『強盗』『内乱』『外患』『私戦』『通貨偽造』というような本当に少しの犯罪だけ例外の例外として、『予備』でも処罰すると。
 さらに、例外の例外の例外として、『予備』より前の『共謀』、相談して計画するというだけで処罰するというのが本当に一握りの罪についてあるんですね。今、日本で『共謀』が処罰されるのは、『内乱』、これは国の統治機構を破壊する等して、憲法の定める統治の基本秩序を壊乱する事を目的として暴動をする事、これの陰謀ですよね。それから『外患誘致』、外国と通謀して日本国に対して武力を行使させる、その陰謀。それから『私戦』、外国に対して私的に戦闘をする事。これぐらいのとんでもない大変な罪、あと『破防法(破壊活動防止法)』とか『自衛隊法』等がありますけど、本当に一握りの重大な罪についてだけ『共謀』が処罰されるとなっています。
 ところが、今出てきている『共謀罪』法案というのは、これからは、長期4年以上の懲役あるいは禁固刑の罪に当たる行為、解りにくいんですけど、簡単言ってしまうと、『○○をした者は、懲役あるいは禁固4年以下に処する』という風に法律に書いてあるとすると、もうそれは一律に『共謀罪』を成立させてしまう。これより重い刑が定められている犯罪は、全て『共謀罪』にしてしまおうという法律だという事ですね」


 例えば長期4年の刑とはどういうものがあるんですか?

 「もういちいち挙げていったらキリがないぐらいで、数で言いますけども、今現在619の犯罪があると言われています。
 住民税をごまかしてやろうとか、これは『地方税法違反』という事になりますよね。それからCDを違法コピーして友達に売ってやろうとか、これは『著作権法違反』という風になりますし、殴ってケガさせる『傷害』、万引きの『窃盗』とかね。皆さんがよく聞くような犯罪はほとんど入っているし、『え、そんなのまで犯罪になるの?』というぐらい大変な数じゃないですかね。
 あとそれ(『共謀罪法案』)は、団体として『共謀』した時という風になっていますから、団体としてそういう犯罪を『共謀』した時には、犯罪になりますよという法律ですね。『共謀』ですから1人だけで考えても、それはもちろん『共謀』にはなりません。で、2人はどうかと言うと、法律的にはもう2人から団体です。2人以上の人間が、共同の目的を持って、それから内部的に任務分担を決めていたりすると、それは団体になると。この法律で言う団体になるという風に言われています」

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■『きつい冗談』や『目配せ』でも成立してしまう『共謀罪』

 今回の共謀罪法案について、弁護士会はどんな反応なんですか?

 「弁護士会というのは全国に52あって、その52の弁護士会と1人1人の個人の弁護士全員が入って日本弁護士連合会を作っているんですが、52の弁護士会のうち47の弁護士会で反対の声明が出ています。日弁連も、本当に繰り返し反対の声明や意見書を出していますね」


 何故反対をしているのですか?

 「反対の理由は色々あると思うんですけど、大きいのは、日本では今まで現実に結果が発生して初めて処罰するという既遂処罰が原則だったんですよね。人を捉えて処罰するというのは、国家権力が自由で自律的な生活に介入して強制措置をとるという事ですから、そういうのはできるだけ必要最小限度にしておこうという考えだと思うんです。
 けど、それが今度は『未遂』も『予備』も通り越して、いっぺんに600以上の犯罪を『共謀』したという事で処罰するわけですから、日本の刑法の大原則を根本からひっくり返してしまう。これが大きな反対理由だと思います。
 それと『行為』が無くても処罰されるわけですから、『意思』だとか『思想』の処罰にもつながりかねない。『思想・信条の自由』とか『表現の自由』『集会・結社の自由』等にも重大な脅威になってくるという事で反対しているんだと思いますね。
 『共謀』というのは、相談して合意する事だと思うんですが、これは国会の答弁で言われているんですけど、『目配せでも共謀が成立してしまう』と」


 目配せでも! 誰でもやりそうな事ですね?

 「そうですね。だから、血判状を作ったり、契約書を作る必要なんて全然無いわけです。目配せなんか、したかしていないか解らないという、そういうレベルで『共謀』が認められて、しかも619もの犯罪についてそれが成立してしまう可能性があるという事で、これはどこまで広がっていくか解らないという恐ろしさがあるという事でしょうね」


 例えば、『本当にする気は無かったんだけど、冗談で言ってしまった』事とかに適用される可能性ってあるんですか?

 「これは、保坂さんという東京の国会議員(保坂展人社民党衆院議員)に『大阪の人は冗談がきついですものね』と言われたんですけど(笑い)、きつい冗談と本気の計画なんて簡単に見分ける事ができるかどうか。
 その場にいた人に『いや、あいつは本気だった』と言われてしまうと、『それは冗談でしたよ』ではなかなか通らないんじゃないかという心配がありますよね」


 『あいつ、シバいたろか?』というのを何人かで酒の席で話した場合も罪に問われる事があり得るんですか?

 「そうですね。『あいつ、シバいたろか?』という話をして『そうだ、そうだ』と言うだけじゃなくて、『うんうん』という風に首を振るだけで合意が成立したと言われかねないですね」


 目配せや首を振るだけでも?

 「そうですね。
 それとあと怖いのは、『実行』が必要ないですから、『共謀』してしまえば、次の朝、酒が醒めて、『ああ、アホな事を言ったけど、あれは間違いだった。絶対そんな事をしないでおこう』と引き返したとしても、『共謀』自体は成立してしまいますから、犯罪は消えないですよね」


 例えば相談だけで罪って、どうやって証明していくんですか?

 「相談だけで犯罪が成立するという事ですから、その犯罪を証明するものとして考えられるのは、どこかで誰かが盗聴してテープ録音しているという。まあ共謀罪ができると、盗聴をもっと簡単にできるようにしようという法律が出来てくるんじゃないかという次の恐れが心配されているんです。
 テープ録音をしないとしても、そうなってくると今度は物証が無いわけだから、『言った。言わない』の世界になってくると思うんです。で、仲間のうちの誰か1人が警察に自首して、『言った。言わない』の世界になっていくという事が考えられますね」


 相手が嫌いで陥れようとして、でっち上げとかで罪に問われる事もありますか?

 「そうですね。『共謀罪』には『実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し又は免除する』という風になっているんです。
 自首したら罪に問われないというのは良い事かなと思うんですけど、よく考えてみると、例えば今おっしゃったようにね、誰かをひっかけたくて、わざと『共謀』に誘い込んでおいて自分だけ自首したら、自首した人間は罪に問われないで引っかけられた人間が一網打尽。
 あるいは、冗談で犯罪の合意をした経過等をテープ等に録っておいて、その中の誰か1人が警察に持ち込んじゃうと、持ち込んだ人は刑を免除されるけど、逮捕された人間は『冗談でした』では通らなくなる。
 『この話をあの人にして良いんだろうか?』という風になってきますよね。さっきの話じゃないけど、もう『きつい冗談』を口にできないですよね。
 さらにもう1つ問題は、『きつい冗談』を聞いた時に、目配せでも『共謀』は成立すると言われているわけですから、『きつい冗談』を聞いた時に、『これは冗談じゃない』という風に考えられるとしたら、その人は一番先に警察に自首しないと助かりませんからね。もう『きつい冗談』を聞いた人間は、すぐに警察に行かないといけない。こんな事にもなってくるんじゃないかと思いますね」

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■条約が適用範囲にしているのは国際マフィア犯罪
 そもそも何故『共謀罪』法案を成立させようという事になったのですか?

 「法律を作る時には、法制審議会という法務大臣の諮問機関があって、必ずそこを通して国会に出てくるんです。その法制審議会に法務省が『共謀罪』についての議論を諮問した時に、(法務省は)『日本の国内には、こういう法律を必要とするニーズ(需要)は無い』という風に言い切っているんですね。『ただ条約があるから、その為にこういう法律を作らなければならない』と言っているんです。
 その条約というのが、2000年に国連総会で採択された『越境組織犯罪防止条約』というものなんですよ。難しい名前ですが、これを法務省は『国際組織犯罪防止条約』という風に言っているんですけど、英語の文章では『transnational』という言葉が使われていて『international』ではないんで、やっぱり『国際』ではなくて『国境をまたぐ越境的な組織犯罪』という事になると思うんですけどね。
 この『越境的な組織犯罪を防止する条約』というのが、今言ったように2000年11月に国連総会で採択され、12月に日本政府が署名して、2003年の5月には国会も承認しているので、法務省は『この条約で共謀罪を作れと言われているから作るんです』という説明をしているんですわ」


 『越境組織犯罪』って、例えばどういう事になりますかね?

 「国連がイメージしているのは、国際的なマフィアですよね。国際的なマフィアが、国境を越えて犯す重大な犯罪、麻薬にまつわるような犯罪であるとか、あるいは組織的な殺人とか、そういうものについて取り締まっていこう、防止しようという条約としてできているという事ですね」


 テロ等も関係ありますか?

 「これはね、ちょっと説明が難しいんですけど、国連の条約にはマフィア関連の条約とテロ関連の条約という2つの流れが本当はあるんですわ。
 で、この条約は、マフィアのマネーロンダリング(資金洗浄=違法行為で稼いだ金を合法的なものに変換する事)だとか、国際的な麻薬取引だとか、そういうものを取り締まる流れで出てきている条約なんです。
 これとは全く別の流れで、ハイジャックだとかテロリストに資金供与するのを防止する条約もあって、本来は別々の条約なんです。
 日本では簡単に、この条約(『越境的組織犯罪防止条約』)があって『共謀罪』を作ったら、テロリストを防止できるとか言われているんだけど、細かい話になるようなんですけど、条約の本当の趣旨から言えば、テロリストではなくてマフィア関連の条約だという事ですね」


 『あいつ、ちょっとシバいたろか?』という相談でも罰せられるという話とマフィアの大きな犯罪と随分差があるような感じがするんですが?

 「そうですね。
 法務省は、この条約が『重大な犯罪の共謀を犯罪とするよう義務づけている』から『共謀罪』法案を作ると言うんですけど、今言ったように、この条約というのは組織的な犯罪集団が関与する越境的な犯罪を適用範囲としている。けど、法務省が言っている『共謀罪』には『組織的な犯罪集団』なんて条件になっていないし、『越境的』つまり『国境を越える事』も条件になっていないので、この条約を理由にこんな法律を作るというのは無理があると思います」


 例えば日本以外では『共謀罪』についてどういう動きになっているのでしょうか?

 「刑法にね、ドイツやフランスみたいな大陸にある国の法律、『大陸法系』と言うんですけど、この大陸系の法律と、米国とか英国の法律、『英米法系』と言うんですが、こういう2つの流れがあるんですよ。
 で、英国とか米国では、初めから、と言うよりも昔からと言ったほうが良いかな、『共謀罪』っていうのはあるわけですよ。
 だから、こういう条約ができたからと言って、すごく大変な新しい法律を作る必要は全然無いんですね。
 けれど大陸法系というところでは、共謀自体は罪にはならない。で、新しい罪を作らなければならない事になるんです。
 もう1つ説明しておくと、9.11(2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ)の関係者と言われる人間が米国で終身刑の判決を受けたというのが新聞に載っていましたが、これはね『共謀罪』なんですよ。9.11のテロを共謀したという事で終身刑になったんですが、日本では『共謀罪』が無いからあれは処罰ができないかと言うと、そうではなくて、日本には『共謀共同正犯』と言うんですけど、相談をして、相談した人の誰かが犯罪を実行すれば、(相談に乗っただけの人も)犯罪を実行したのと同じだから処罰できるわけですよ。だからあの米国の例は、日本では『共謀罪』ではなくて『共謀共同正犯』で処罰されるという事なんですね。
 ところが今度の『共謀罪』というのは、実行が無くても、純粋に本当に共謀だけで、『共同正犯』でなくとも『共謀罪』で処罰できるという事なんです。
 ただ何度も言いますけど、この条約は『越境的な組織犯罪集団の犯罪』を適用範囲にしているという事ですよね」

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■政治的ビラを配っただけで逮捕される時代に『共謀罪』
 今回の『共謀罪』法案は拡大解釈してしまうと、どんな事にでも適用されてしまう可能性があるという事ですね?

 「そうですね。とめどなく広がっていく可能性があるんじゃないかと思いますね」


 何でこんなに範囲を広げて法律を作ろうと考えているんでしょう? 裏には何があるんでしょう?

 「『裏には』と言うとなかなか難しいんですけど、やっぱり犯罪を取り締まる側の人、法務省の役人であるとか警察の人というのは、できるだけ犯罪は起きないようにしたいと思っていますからね。もう小さな芽のうちから摘んでしまいたいという風に思って、こういう法律を作るのは、それはそれで不思議ではないと言うか、解らないではないですよね。
 ただそれをそのまま通して良いのかどうか。何かチェックが要るのではないのかという議論だと思うんですけどね」


 個人の思想の自由や表現の自由という部分にも影響するだろうという話がありましたけど、思想や言論の弾圧につながるとも考えられますか?

 「今までは悪い事をしたら処罰されたんですよ。けれどもこれからは、悪い事を口にしたから処罰されてしまうわけですよね。
 そうするとそれは、結局人の考え自体を処罰対象にするのと変わりませんから、そういう意味ではこれは思想弾圧だという言い方もできるんだと思います」


 例えば国のやっている事に対して悪口を言っただけでも処罰される可能性もあると?

 「そう簡単に言い切って良いかどうかという問題もあるんですけど、例えば最近では、『イラク派兵について一緒に考え反対しよう』というビラを自衛隊官舎の郵便ポストに入れただけで逮捕され75日間も身体拘束されたという事件がありましたよね。
 住居侵入、建造物侵入ですね。要するに『敷地の中に入ったから』という事なんだけど、あの裁判でよく言われたのは、『ピザのチラシや色々な宣伝のチラシを入れても絶対に逮捕される事はない』と。けれども『イラク派兵に反対しましょう』というビラだと逮捕されているわけです。
 政治的なビラをポストに入れて逮捕され起訴されるという事は、昔は無かった事なんですけど、最近は相次いでいるわけです。
 そういう状況の中で、悪い事を口にしたら、あるいは悪い事を聞いただけで、『共謀罪』で逮捕されかねない。けれども(対象犯罪が)619もあって、何が悪い事かよく解らないという話になってくると、『これからはできるだけお上に逆らうような事は口に出さないでおこう』、あるいは自分が口に出さなくても聞いたらアウトですから、『お上に逆らうような事を言いそうな人の傍には近寄らないでおこう』という風潮にもなってきかねないという心配がありますよね」


 戦前に治安維持法というものがあって、反政府と言われた人達が捕まって拷問されたりしましたが、この法案が通ればそれに近い形になる可能性がある?

 「あくまで可能性の問題としては、それは排除しきれない。この法律の条文を読む限りは、『絶対そうはなりませんよ』という風にはとても言えないと思いますね」


 危険性はありますか?

 「はい。
 『週間金曜日』という雑誌に、去年の12月頃の記事なんですけど、平沢勝栄さん(自民党衆院議員)という警察官僚から国会議員になった方が共謀罪について触れているんですね。その中で、要するにこの問題は『警察を信用するかどうかだ』という言い方をしていらっしゃるんです。警察はそんな悪い事をするはずがないじゃないかとか、正確に言うと『つまるところ共謀罪の問題は、捜査当局を信用するかどうかという事だ』という言い方をしていらっしゃるんですが、問題は信用するかどうかにかかっているような法律というのはいかんのですよ。
 『法治主義』だとか『法の支配』という言葉を聞いた事があると思うんですけど、それは、どんな法律であっても、その法律を運用する人、適用する人がどういう人であるかによって変わってはいかんという事だと思うんです。極端な事を言えば、どんな極悪人がその法律を運用していたとしても、人権侵害が起きないような法律になっていないといけないと思うんですよ。
 運用する人が信用できるかどうかにかかっているような法律は、やっぱりそれ自体悪法と言うしかないんじゃないかなと思うんですけどね」

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■反対世論の盛り上がりに、与党強行採決に踏み切れず
 共謀罪法案の(国会)審議はどの辺まで来ているのでしょうか?

 「この法律案が国会に出てから既に3年が経っています。だから3年前から同じ危険性があったんですけどね」


 最近出てきた法律案じゃないんですか?

 「そうです。2003年に初めて上程されて、今まで、衆議院は2回解散されていますから、2度廃案になっている」


 それ程難しい法案?

 「そういう事だと思いますね」


 なかなかすぐにクリアできる問題ではないと?

 「それが、去年の選挙で与党圧勝という情勢で、また出てきて、連休前の4月28日に衆議院法務委員会で強行採決されるんじゃないかという風に言われていたんですが、急速に反対世論が盛り上がってきたという事もあると思うんですけど、与党は強行採決しなかったわけですね。
 で、強行採決はまだされていない。法務委員会での審議は続いているという状況ですね」


 与野党が修正案を出しているようですけど、どんなものを出してきたんですか?

 「まず与党が修正案を出してきたという事は、2回も廃案になって非常に問題があるという事を与党自身も感じているという事だと思うんです。
 だから、『団体』というところと『共謀』というところについて制限を加えましょうという修正案だと言うんですが、実際には限定された事にはならないだろうと思いますね。
 民主党の方は、団体を組織犯罪集団に限るという風にした上で、さらに越境的な犯罪の『共謀』だけを処罰するという風に作り直したと言っています。
 民主党の修正案と政府案、与党案を比べると、条約を理由にしている政府や与党の説明にいかに理由が無いかという事がはっきりするんですが、ただ民主党の修正案なら良いのかどうかというところはきちんと検討する必要があるだろうと思っているんですけどね。
 1つ目は、何度も言うけど、日本の刑法の根本原則がガラッと変わってしまうという点では違いはないわけですよ。それとあと、『団体』についての縛りが民主党案は縛られているはずだと言うんですけど、本当に縛られているかどうかはちょっと検討する必要があるんじゃないかなと思っていますね」


 この国会でこの法案が通るという可能性はどうなんでしょうか?

 「(国会の)会期が6月18日までなんです。
 小泉さんは『延長はしない』とずっと言ってきているわけですけど、実際なかなか解らないところがあるんですが、もし延長がないとすると、これだけ大変な法律を衆議院で通ったとしても、参議院に行って充分に審議できるかと言うと、やっぱり難しい。
 無理をすれば通らないではないのかも知れないけど、時間的には本当にギリギリ、極めて難しい日程になっているんだと思いますね」


 世論の反応というのもこれからより大事になってきますか?

 「はい。
 ものすごく大きな影響のある法律である事は、誰も否定する人はいないと思うんですね。そうだとすると、やっぱり多くの人が関心を持って、成立させるにしてもさせないにしても、充分に議論をしていく必要があると思うんですよ。
 国会の会期が6月18日だから、それまでに通してしまわなければいけないとかね、あるいはちょっとだけ延長してそれで通してしまわなければいけないとか、そういう事が要求されるような法律ではないはずだし、またそんな事をして急いで決めてしまって良い法律ではないと思います。
 なかなか世論の関心が集まるまでには時間がかかったんですけど、ここ最近本当に最近ですけど、どの新聞にも特集記事が載るようになったし、テレビでも特集が組まれるようになって、ようやく色々な人にこの法律の問題点の在り場所が解ってきたところだと思うんですね。
 これからきちんと議論をして、その上でどうするか決めていく必要があるんじゃないかなと。その為に、多くの人にもっともっと関心を持って欲しいし、また声を上げていって欲しいなと思っているんです」


 他人事ではなくて、直接本当に身近に自分に関わるような法案ですからね?

 「『悪い事しないから関係ない』という風によく言われるんですけどね、何度も言うけど、これは悪い事をしなくてもアウトなんですよ。
 悪い事を相談したらアウト。で、目配せでもアウトだから、悪い事を聞いたらアウトになってしまうわけで、そうなるともう、『私は悪い事をしないから大丈夫』という話にはならないという事だけは、皆さんに知って欲しいなと思いますね」

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