06/04/18〜06/04/22 放送 バックナンバー
欠陥住宅に立ち向かえ! 20人の設計の匠達
ゲスト:
NPO法人欠陥住宅を作らない住宅設計者の会・片山繁行さん
 
10年間の無料電話相談5000件、一番多いのは地盤沈下!
溶接がいい加減な鉄骨住宅では建て替えの危険も!
欠陥住宅でまず起きる夫婦喧嘩『買ったあなたが悪いのよ!』
行政は個人の住宅を守ってはくれない! 大手メーカーでも安心禁物!
現場監督は経験不足、職人の技術レベルも下がっている!
 誰もがあこがれるマイホームの購入。ライフスタイルに合わせて間取りや内装、インテリアに家族の夢は大きく広がりますが、ここで忘れてはいけないのが建物の構造に欠陥が無い事です。今週は、耐震強度偽装問題でクローズアップされた欠陥住宅の恐ろしい事例や、なぜ欠陥住宅が作られてしまうのかについてNPO法人欠陥住宅を作らない住宅設計者の会副理事長の片山繁行さんにお話を伺います。
■10年間の無料電話相談5000件、一番多いのは地盤沈下!
 『欠陥住宅を作らない住宅設計者の会』ができたきっかけは何ですか?

「10年前に、大阪の弁護士で澤田和也先生という方がいらっしゃって、その澤田先生が欠陥住宅の弁護活動をされていました。欠陥住宅の裁判で被害者側に立って闘う為に武器として専門家の意見書や鑑定書が欲しいという時に、実際には同業者を庇い合うという事があって、なかなか被害者や消費者の側に立った人がいない。
私達のNPO法人の理事長がその話を聞いて、名古屋では被害者の側に立てるような設計者を組織しようという事で、呼びかけて始まったのがきっかけです」


 今参加している設計者の皆さんは何人ですか?

 「現在は21人です。ただ理事長は建築ジャーナリストなので、一級建築士としては20人です。
 当初は31人でスタートしたんですけど、やはり裁判所に行って意見陳述したり、証人尋問に立ったり、被害者の家に行って調査をするという事が苦手だというのが、『やってみて解った』と言う人もいらっしゃって。
 また逆に『やりたい』とおっしゃる方もいたりして、プラスマイナスがあって20人の専門家でやっています」


 20人の皆さんは設計士としての仕事をしながらこの活動に加わっているんですか?

 「そうですね。基本的に自分達の仕事は、リフォームもありますが、ほとんどが新築の建物です。もちろん住宅だけではなくて、病院とか社会福祉施設とか、そういう建物の新築を設計・監理するというのが主な仕事です。
 ただ私達が一級建築士という国家資格をいただいている以上、社会に自分達の仕事を還元しなければいけないという気持ちから、ボランティアで、当番を決めて、平日に電話相談を受け付けています」


 10年間で寄せられた相談件数は?

 「去年で471件。10年間のトータルは5000件を超えましたね」


 名古屋を中心とした方の相談ですか?

 「私達の活動の中で本も何冊か出版しているので、その本を読まれた方で名古屋以外からも相談に来られますね。一番遠くでは、北海道から相談に来られた方もいますね。それから大阪からも何件かは来ていると思います。でも中心は愛知・岐阜ですね。それから三重県も多いです」


 欠陥住宅の例はどんな内容が多いですか?

 「一番多いのは地盤沈下ですね。実は地盤の問題が非常に大きくて、相談件数全体の3分の1ぐらいあります。
 雨漏りが3分の1。その他が3分の1という感じですね。
 中には単純に質問をしたり、建築の事をちょっと教えて欲しいというものもあります。
 それから、ちょっとこれはあまりにも神経質になっているんじゃないかなという、工業製品じゃないからその程度は我慢しなければいけませんよというような相談もありますね。
 電話相談は無料でしていますが、ひどい例はどうしても実際に現場を見なければいけない。実際に建物を見なければいけないという事で有料相談になるものは、5000件のうち800件ありました。そのうちの1割ぐらいが裁判になっています」

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■溶接がいい加減な鉄骨住宅では建て替えの危険も!

 例えば建物でも木造、鉄筋、マンションの違いで欠陥住宅の中身が違うんですか?

 「木造の場合はやはり地盤沈下というのが大きいですね。
 それから最近は若い方が家を作るというのが増えていて、かつ敷地面積が狭くても便利だという事で都心に作られる方も多いので、3階建て住宅が非常に多いんですね。3階建ての場合は、鉄骨造りというのがあるんですが、実はこれが結構欠陥でなんともならないという、要するに地盤以外で骨組みの部分で建て替えなければいけないというような事例が多くなってきています」


 家の幹に当たる鉄骨が歪んでいたりするという事なんですか?

 「歪んでいるのではないんです。
 阪神大震災の時に、それぞれの建物の倒れ方というのがあったと思いますが、例えば鉄骨で言うと、実際には溶接箇所から破壊されている。それから基礎と鉄骨の柱との間で引き抜かれて壊れているという例がほとんどだったと思います。
 ですから欠陥住宅と判断される部分は、やはり溶接がいいかげんなんですね。阪神大震災であれだけ痛い目に会っていながら、作る方が溶接の部分でいい加減な仕事をしているというのが1つの大きな要因です。
 それから3階建ての建物の場合は、確認申請書という建物を作る前に役所に届けなければいけない書類があるんですが、そこに構造計算書をつけなくても良いという風にどんどん自治体が条例で決めているんですね。
 ところが、『構造計算書を付けなくて良い』イコール『計算をしなくて良い』、『やらなくて良い』と、悪いもしくは無知な業者は考えるわけです。で、私達が相談に行くような建物というのは、大体そのような業者が多いわけです。
 3階建て住宅を見に行って、『構造計算書を出してください』と言うと、『えっ、そんな事をしなくちゃいけないの?』とか『していませんよ』という事で、構造計算を新たにやり直すと、地震に対して全然建物がもたない、壊れるという建物があるんですね。そういうのは裁判になると、構造が駄目なので、大体裁判では勝訴していますね。
 ただ実際には、姉歯元建築士による耐震強度偽装と同じ様に、(代替住宅の)アパート代金も払っている、出来上がった家のローンの返済も始まっているという事もあります。欠陥住宅の被害は、戸建住宅では国の援助も何もないですから、更に厳しい状況にありますね」


 強度や建物の中身が、注文した側から全然解らないというのは問題ですね?

 「そうですね。
 よく言うんですが、木造の場合は基礎さえしっかりしていれば、上の柱や梁が少々悪くても補強できるんです。
 でも鉄骨の場合は補強がほとんど不可能なんです。
 という事で、鉄骨や鉄筋コンクリート造りの場合は、構造計算書を必ず見せてもらってください。構造計算書が無いと言う様な人や会社からは家を買わない、作らないという事に注意してもらいたいですね」

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■欠陥住宅でまず起きる夫婦喧嘩『買ったあなたが悪いのよ!』
 実際に欠陥が見つかった場合、まずすべき事は何ですか?

 「欠陥の程度にもよるんですが、できる限り自分でしっかり建築の勉強をして事態を把握するというのが第一です。
 で、建築の設計者か弁護士さんかのどちらかに相談する事をお勧めします。たぶん設計者に相談する方が解決までの時間は早いと思います。
 ただその設計者も、住宅の設計がきちんと出来る一級建築士は、私がいる名古屋でおそらく100人程度なんです。大阪はたぶん150人ぐらいでしょう。その中でそういう相談もやってあげるよと言うのは、名古屋では私達の会ぐらいしかないんです。全国的に見ても、20人の一級建築士が電話相談を毎日受け付けているのは無いですね。設計はできるけれども相談は嫌というのも結構いますので。ですからそういう設計士を見つけるのも大変だなと思います」


 弁護士の中には、欠陥住宅についての知識をあまり持っていない方もいると聞きましたが?

 「その通りだと思いますね。
 ビルは設計できても住宅はできないというのと同じで、弁護士の中にも、おそらく刑事裁判が得意な方もいれば、民事が得意な方もいます。民事の中でも、医療問題は得意でも建築問題は苦手とか。『建築の事も相談に乗れるよ』と言う人は、ある程度絞られてくると思うんです。
 で、具体的に言えば、弁護士が中心の欠陥住宅ネットワークがあります。これは大阪にもありますので、そこへ相談されるのが一番良いと思いますね。当然弁護士が中心ですけど、建築の設計士もそこに加盟されているので、相談されれば弁護士も建築士も見つける事は容易だと思いますね」


 裁判になって問題が解決するまでどのぐらいかかりますか?

 「地方裁判所で2〜3年はかかりますね。それからお互いが納得できずに高裁に控訴という事になれば、数年はかかるんじゃないでしょうか。
 大体欠陥住宅になった時にまず起きるのは夫婦喧嘩です。『あなたが悪い』の応酬から始まりますが、そこで『私達は悪くない。欠陥住宅を作った建設会社や設計者等が悪いんだ』という気持ちになって、一緒に闘おうという気持ちになって欲しいと思います。
 裁判は、そういう共闘体制にならないと勝てないんですよ。私は欠陥住宅をつかまされて離婚したケースを知っています。だから夫婦が協力してその問題を乗り越えよう、立ち向かおうという心構えがまず必要だと思いますね」

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■行政は個人の住宅を守ってはくれない! 大手メーカーでも安心禁物!
 欠陥住宅をつかまされた場合、行政や法律で救済する方法はないんですか?

 「行政は『そんな小さな建物については構造計算書なんかチェックしないよ』というのが基本的な対応です。作られる方と、国が資格を与えている建築士である設計者や監理者の責任でやってくださいというのが基本的な考え方です」


 あくまで個人資産であるというスタンスですか?

 「そうですね」


 建売を購入する場合は、どういうところがポイントですか?

 「建売住宅を購入する場合は『売買契約』になります。建物を作る場合は『請負契約』という事で、契約の種類が違います。建売の場合は『売買契約』なので、いざ買ってしまうとなかなか裁判で助けられないので、よほど注意して欲しいですね。
 まず構造計算書を出してもらってください。それから地質調査をきちんとやっているかどうか。それから地質調査に基づいた基礎ができているかどうか。そして施工途中の写真をしっかり撮っているかどうか。こういう事を問い合わせて、ちゃんとしているところは購入の検討に値すると。
 建てる場合はどうすれば良いかと言うと、『ハウスメーカーなら大手だから安心だ』と言われる方もいますが、実際に私達のところに相談に来ている例では、大きなハウスメーカーでも建て替えをしなければならない物件もあります。1年間に10センチも地盤が下がってしまうような大手ハウスメーカーの例もありますし、杭を打った所と建物の建った所が1メートルずれていたりとか、大手だから安心とはなかなか言えないと思います」


 住宅をリフォームする場合、リフォーム詐欺に合わないポイントは何ですか?

 「まず訪問販売ではリフォームを頼まないというのが一番良いと思います。
 訪問販売で被害に遭った人は繰り返し被害に遭っています。同じ会社からだけでなく、他の会社からも被害にあっている。大体、被害に遭った家に行くと、印が付けられています。例えば『SL』とか。アルファベットで書かれているんですが、『シングル・レディ(独居女性)』の意味です。『R』は老人とかね。
 で、断る事が苦手な人とかが被害に遭うので、まず訪問販売ではリフォームを頼まない、家を買わないというのが大事だと思います」

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■現場監督は経験不足、職人の技術レベルも下がっている!
 「日本の建築基準法は、地震が起きるたびに変わっていると思って下さい。その大きな法律の改正が、実は1971年と81年にされています。
 81年以降の建物を『新耐震設計による建物』と呼んでいます。今の姉歯問題で揺れているのは、81年以降の耐震基準の法律に基づいてどうかという事です。ですから81年より前の建物か後の建物かを考えてもらって、81年以前の建物であれば、少し耐震の問題を検討されても良いと思います。
 戸建住宅の場合は、基本的には全国的に無料耐震診断が行われていると思います。大阪でも各自治体で行っていると思いますので、まず自治体に尋ねてみると良いと思います。
 それから信頼できる業者の見つけ方は、簡単に言うと『専門家の第3者を入れても良いか?』と言った時にOKするのがまず第一歩です。『第3者を入れてもらうと困る』と言う会社はやめてください。要するにそれだけ自分の仕事に責任を持たないとか自信が無いという事ですから。
 そういう意味で言うと、私達も努力しますけど、家を作る人はすごく勉強して欲しいんですよ。『衣・食・住』という言葉がありますが、その『住』については、中学や高校で何も教えていないんですよ。という事は皆さん、『住』に対する考え方が何もできていないんですよ。だからコロッと騙される。やっぱり中学・高校で住いの基本的な事、作り方とかコンクリートとはどんなものとか、木造と鉄筋はどう違うのかとか、鉄筋と鉄骨の違いとかをしっかり教えてもらっていれば、こんなに欠陥住宅は出てこないと思います。
 建物を作る方からすると、すごく技術レベルは落ちていますから。昔、欠陥住宅が何故無かったかと言いますと、技術レベルが高かったから。職人の良心もあったから。要するにこんな事をしてはダメだという。それから現場監督の技術レベルも、ちゃんと教えられてある程度のレベルだったから。
 今は社会に余裕が無いもんだから、大学を出てとか建築の教育を受けてから外へ出てすぐに現場を持たされるでしょ。昔だったら3年、5年と先輩の後をついてやるんですけど、今は本当に1年に満たないうちに1人で現場を持たされるんですね」


 総合経営研究所の経済効率を考えたコンクリートの打ち方が社会的にクローズアップされましたね。いかにコンクリートを早く乾かすかという発想と技術レベルの低下は関係ある?

 「その判断ができないんですよ。経済的にはそれが良いと解っても、『これをやってはいかんわな』というのが昔だったわけです。今は『そういう風に上から言われているんだったら、やってしまおうか』と」


 鉄筋の間隔をあける事や数を減らす事についても一緒ですか?

 「昔は『こんなに鉄筋の数が少なくて、監督さん、良いの?』と、まず鉄筋を組んでいる人が言っていました。ところが今は『図面に書いてあるから良いんじゃないの?』という事になっている。
 そういう意味では、全体の建築技術のレベルの低下は甚だしいものがありますので、その中で欠陥住宅がたくさん生まれてきているんです」

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