05/06/14〜05/06/18 放送 バックナンバー
関節痛の救世主! 人工関節手術の日進月歩
 ゲスト: 富永病院院長・大西啓靖さん
 
人工関節手術8000例のお医者が語る!
まずはプール歩行等で、軟骨の回復を目指そう!
飛躍的に進歩した人工関節のテクノロジー
人工関節手術の費用は? 日数は? 退院した後は?
人工関節でも軽いゴルフやテニスができる!?
 いよいよ梅雨の時期ですね。湿気が多いと手や膝、股関節に痛みを感じる方も多いんじゃないでしょうか。痛みを和らげる体操や筋力トレーニングに励んでいるという方の話も聞かれますが、最近、医療技術の進歩で人工関節手術をうけて症状が大幅に緩和される例が出てきています。その人工関節手術で有名なお医者さんが大阪にいるんです。今週は、日本の人工関節の草分け的存在で30年以上にわたって研究と治療に打ち込まれている富永病院院長・大西啓靖先生にお話を伺います。
■人工関節手術8000例、日本一のお医者が語る!
 そもそも関節は、どういう仕組みになっているのですか?


「関節というのは、2つのものが擦れ合って動くようになっているわけです。擦れ合っている面は軟骨で覆われていて、その面同士が擦れ合っているわけですね。そして、それがいつまでも持続するように、そこには関節液というものがあって、その関節液が軟骨に栄養を与えて、
ずーっと維持していくわけです」



 手足の関節が痛いと言う人は多いですか?


「そうですね。1つは、日本人の女性で一番多いのが、生まれつき股関節の形成が悪い為に、歳をとって軟骨が潰れて痛くて歩けなくなると。
それから膝関節も同じですね。歳をとってきますと、O脚と言いまして、足が曲がってきますね。それで膝の内側の部分が破壊していって、非常に痛くて歩けなくなると。
それから関節リウマチですね。この場合も、全身の関節が侵されて、軟骨も潰れて、歩けなくなったり、身動きできなくなったりする事もあるわけですね。
もう1つは、大腿骨頭壊死症と言いまして、美空ひばりさんが罹った病気と同じなんですが、
骨が死んでしまうわけですね。それで痛くなって動けなくなると。
さらに、歳をとりますとね、大腿骨の頚部骨折をよく起こすんですよね。それで動けなくなるというような事があるわけですね」



 そのような病気になったら、皆さん人工関節手術は必要ですか?


「必ずしもそうではありません。本当に骨が破壊して潰れてしまったと、そして他に何も方法が無いという場合のみに人工関節手術を行うのが普通です。
私自身の症例数は、今までに8000例を超えています。この富永病院に来ても1500例は超えています。ちょうど4年ですけども。国内で一番多いと思いますね。
『日常生活ができない』、『普通の生活がしたい』あるいは『旅行もしたい』という色々な希望があるわけなんですよね。そうする為には、やはり人工関節の手術をしない限りは、できないわけですからね」
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■まずはプール歩行等で、軟骨の回復を目指そう!
 手術以外のやり方にはどういう方法がありますか?


「これはリハビリテーションですね。
リハビリの目的の1つは、筋力を強くする事です。筋力を強くすると、関節にかかる負担が少なくなるわけですね。
もう1つは、関節液を動かす事です。体重をかけないで関節を動かすと、関節液が動き、
軟骨へ栄養が行きますから。それで軟骨がある程度回復されるのを期待するわけですね。
それから、血流の問題。血流を良くする事によって、軟骨の回復を期待する事ができるわけですね。
その為には何をするかと言うと、1つは、温水プール。温水プールの中を歩くと、加重をかけないで関節を動かしているという事で良いわけですね。しかも水の抵抗がありますので、
筋力がつくと。
もう1つは自転車漕ぎ。これも体重をあまりかけないで、関節を動かすという事で、非常に意味があるわけですね。
それから体操ですね。抵抗を加えながら、体操すると。これも体重をかけないで動かしますから、筋力をつける事と関節を動かすという事で非常に効果的なんですね」



 そのようなリハビリをしてもうまく治らない場合には人工関節が必要ですか?


「そうですね。そういう事になります。
年齢層は、以前は、人工関節の寿命が15年前後と考えられていましたから、60歳を過ぎてからでないとダメというように言われていたわけです。しかし現在、私自身は、年齢の制限はしておりません。20歳代でも手術をしています。特に多いのは50代ですね。女性が圧倒的です。
ちなみに膝も女性が圧倒的です。女性の膝は、やはり0脚が多いんですよね。膝がOの形になりますからね、膝の内側の軟骨が無くなる、軟骨だけじゃなくて骨まで無くなっていくんですよね。ですから、非常に痛いんです」



 そこを人工関節で埋め合わせる?


「そうなんですね。
私が整形外科医になったのは、『関節を治したい』という目的があったからなんですね。しかし、私が整形外科医になった時、国内に人工関節は無かったんです。非常に失望しましてね。
それでとにかく『何かをやろう』という事で、欧州に行ったんですね。その時に、たまたま人工関節のちょうど3年の成績というのが出ていたんです。『これだ!』と思いついてね。
で、その時に、『これをやる為には、材料とバイオメカニクス(生体の動きや機能等の研究)というものをやらなければ、もっともっと良いものができない』というように感じたんです。それで、
その時から、材料の問題とか、骨に入れた場合にどういう変化をするとか、そういうバイオメカニクスの研究にずーっと取り組んできたんです。
最初の頃は、日本の整形外科医から『お前はアホか』、『それでも医者か』というように批判されました。ところが今は、バイオメカニクスとかバイオマテリアル(材料)の問題は、非常に皆が興味を持っている分野なんですよね」
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■飛躍的に進歩した人工関節のテクノロジー
 人工関節にも色々種類があるそうですね?


「人工関節には、大きく分けて3種類あります。
1つは、40年以上前から使われてきた金属とポリエチレンというプラスチックとの組み合わせです。
もう1つは、金属ではなくてセラミックを使ったポリエチレンとの組み合わせ。セラミックを使った方が、金属を使うよりもポリエチレンの減り方が少ないわけですね。
3つ目は、実は僕が35〜6年前からやっていた、ガンマ線を当てたポリエチレンとセラミックとの組み合わせですね。ポリエチレンにガンマ線を当てると、固くなって減らないんですね。
これは世界的に認められてこなかったんですけども、10年前から米国が認めたんですね。
それで今では、世界中でこれが主に使われているんですよ。
その他にも、セラミックとセラミックの組み合わせがあります。これは、非常に磨耗が少ないんですけども、破損の問題がありまして、大きさにおのずから制限があるんですね。だから日本人の女性のように小さい人には制限がありまして、使えないという場合もあります。
それから、金属と金属の組み合わせというのもあります。一部では使われているんですけども、これは金属の磨耗粉が出ますので、これが生体に影響を与えるんじゃないかという心配があります」



 人工関節の技術は飛躍的に進んできたんですね?


「そうですね。
もう1つ大事な事は、骨との固着の問題なんですよ。骨との固着がうまくいかなければ、人工関節は失敗に終わるわけですね。
骨セメントを使っての固定は、40年以上前から行われきて、非常に成績が良いんですけど、
大体15年前後で色々な問題が起こってくるんですね。
で、今度はセメントを使わない方法が出てきたんですけど、これは骨セメントを超える事ができていないんです。だから、セメントを使わない事が、セメントよりも良いという事は言えないんですね。
そこで、私は、20年近く前から、水酸アパタイトを骨とセメントの間に介在させるという事をやっているんですよ。水酸アパタイトというのは、骨からできた成分で、しかも骨を呼び込む性質があるんです。骨を呼び込みますから、いつもそこには骨があるという事で、セメントと骨との間にアパタイトを介在させる事によって、それがいつも結合していて緩んでこないわけですね。
この方法で20年近くの臨床経験があるんですけども、手術した直後と20年後のレントゲンを見た場合ね、ほとんど差がないんです。これから推測すると、おそらく30年あるいは40年以上もつだろうというように考えております」

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■人工関節手術の費用は? 日数は? 退院した後は?
 人工関節手術の費用はいくら位かかるんですか?


「患者さんが自分で全額払おうとする場合は、材料費でも100万円前後かかりますし、
入院費用とか色々考えますと250〜300万円という非常に高額なんですけども、ただ日本には良い制度がありまして。厚生医療、高額医療、身体障害者、特定疾患の各制度ですね。
厚生医療の場合は、これは患者さんの収入によって変わるんですけど、国がある程度負担してくれると。
高額医療の場合も、患者さんの収入が多くても、7万5千円以上高額になりますと国が負担してくれるという事で、それほど患者さんには負担がかからないと思うんですね。
身体障害者も、1級から2級であれば、基本的には医療費の患者負担は無料ですね。
それから特定疾患、例えば大腿骨頭壊死症とか悪性リウマチ、そういった疾患があれば患者負担は無料になるわけですね」



 入院して手術を受けて退院するまでどれくらいの日数がかかりますか?


「これは病院によって違いますが、私が現在やっているのは、手術が終わって2日目位から
車椅子、1週間以内で歩行器を使って歩き出します。そして3週間以内には、もう1本ステッキを使って全加重で歩いていますので、3週間で皆退院。早い人は3週間以内で退院していきます」



 手術の直後からリハビリに入るわけですね?


「そうです。あくる日からリハビリが始まります。そして退院までに全てのリハビリが終わり、
早い人は入院中に正座をしたりしている人も、ステッキなしで歩いている人もいます」



 その方が、人工関節は早く体になじむのですか?


「そうです。特に高齢者の人は、長く寝れば寝るほど弱っていきますから、早く起きる方が良いわけなんですね」



 退院した後は?


「退院したら、翌日から、主婦であれば家事位はできます。それから仕事に戻るのも、電車で通うとか車で通うとかの場合でも、退院して1ヶ月すれば、ほとんどの人が仕事に復帰しています。ですから、それほど休む事は無いと思うんですよね。自営業の座業であれば、退院のあくる日から仕事を始めていますから」
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■人工関節でも軽いゴルフやテニスができる!?
 1度手術受けるだけで大丈夫なのでしょうか?


「問題点はあるんですよね。
1つは感染、バイ菌が入る事ですね。手術中には感染対策をちゃんとやっていますから起こらないんですけども、手術してから2〜3年後、あるいは10年後、あるいは20年後でも、人工関節に菌がつく事があるんですよね。やっぱり異物ですからね、体の中で一番弱い所ですから。
例えば慢性の膀胱炎があるとか、あるいは長い間自分の体のどこかにバイ菌があるのを放っておいたとかね、そういうような事がありますと、人工関節の部分に菌が行ってですね、そこで感染してしまう事があるわけです。
それからもう1つは、高齢者の場合、よく転ぶ事があるんですね。家の絨毯の端にひっかかったり、コードをひっかけたり、スリッパを履こうとしてひっくり返ったり。その時に骨折する事がある。というのは、人工関節は固いですから、柔らかい骨の所に固いものが入っていると、そこで折れやすいという事があるわけなんですね」



 人工関節自体の耐久性は?


「耐久性は、何を使うか、どういう材料を選択するかによって変わりますが、私自身は、少なくとも30年以上、あるいは40年かも知れないと思います。耐久性はあると思いますね、今言いました他のトラブルがない限りは」



 手術した後の日常生活で制約はありますか?


「手術をすれば、周りの柔らかい組織が固まるまでに3ヶ月はかかるんですよね。ですから、
その間に、例えば転んだり、階段から落ちたり、あるいは筋力の弱い人が低い椅子に急に座ったりしますと脱臼する事があるんですよね。だから手術をしてから大体3ヶ月の間は、脱臼を起こさないような動作をしなければいけませんね。
ただ3ヶ月を過ぎれば、普通の人であれば、周りが固まっていますから、普通の生活はして良いと思っています。
それで、私自身は、患者さんには、『慣れたら、お遊び程度のゴルフとか、ママさんバレーとか、テニス位はしても良いですよ』と言っています。ただし『主治医と良く相談した上でやってください』と。
それから、『どれ位のものを持って良いのか?』というのが、一番皆さん、心配する事なんですが、私自身は、家庭の生活で持つような重さはね、例えば20〜30キロの重さは瞬間的に持つのは当たり前ですから、『それくらい良いですよ』と言っています。仕事中ではどうかと問われれば、『大体10キロ以内であれば、毎日持っても良いですよ』、『時々持つなら、20〜30キロ位でも大丈夫ですよ』と答えています。

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