| 聞き手 |
『栄光の上方落語』の中にも収録されていますが、米朝師匠が『東の旅 発端』から『七度狐まで』1時間ほどお演り頂いてるのが昭和48年。枝雀さんが襲名された時ですね。ちょうど50回の記念で、『松鶴、米朝極め付き長講落語会』。松鶴師匠が『らくだ』をどちらも1時間ぐらいやっていらっしゃいます。でも普通は時間の制限がありますよね。 |
| 米朝 |
その時分は13分半とか14分というコマーシャルを入れる関係なんやな。そういうことにも慣れてましたわ。 |
| 聞き手 |
昔、米朝師匠が一番最初にお出しになったLPがCDになりまして、昭和48年から昭和53年まで出てる、『桂米朝上方落語大全集』というレコードがCD40枚... |
| 米朝 |
ほぉ〜40枚ね〜。うちに来てたのそれやな。 |
| 聞き手 |
10枚組4セットですから。題字が二代目の中村鴈治郎さん。 |
| 米朝 |
(レコードのを)そのまま使い回してるんです。 |
| 聞き手 |
逆に使えてよかったですよね。貴重ですものね。 |
| 米朝 |
『中村鴈治郎・書』というのも一番最初のには入ってたと思う。初めの頃はね、よう売れましてな。東芝が「ご夫妻で箱根の湯へご招待したい」「白浜の湯へご招待したい」とか言うてくれたんですよ。 |
| 聞き手 |
へぇ〜 |
| 米朝 |
ところが3日も休めなんだ。 |
| 聞き手 |
当時... |
| 米朝 |
もうスケジュールがね、いっぱいで。残念ながら。もうちょっと先にしてくれと言うてるうちに、そんな話ないようになってしもうたけど(笑) |
| 聞き手 |
でもお家にゴールドディスクは飾ってありますものね。 |
| 米朝 |
はい、はい、あれ2枚貰うてるわ。 |
| 聞き手 |
今普通に出てるものはこの全集の後に録った分ですから、(復刻版を)聞かせていただくと若いですし、テンポもありますし、勢いもありますよね。自分の作品が残るというのはどうなんですか? |
| 米朝 |
う〜ん、今となりゃもうそれもええやろ、てなもんやけどね(笑)始めの頃はたまたま聞いたやつがもう一つやったりすると嫌やったね。せやけど考えてみたらその若い時のとちったりしてても、それが残ったほうがええかも分からん。 |
| 聞き手 |
ほぉ〜。師匠はご自分の音とか映像を聞いたり、ご覧になるのはお好きなんですか? |
| 米朝 |
あんまり好きやないすな。この頃、何年も前のをね、別の興味で聞こうと思うけど、その頃は聞くの嫌やったね。 |
| 聞き手 |
それはアラが見えるからですか? |
| 米朝 |
必ず、たいしたことないんやけど、気に入らん所がでけてくるんや(笑) |
| 聞き手 |
きっちり録るために、お客の前ではなくてスタジオでという方もいらっしゃいますけど。 |
| 米朝 |
そんなこと言うてたらね、OKは出せませんわな。こんなもんはなんかの間違いで、録るつもりやなしにそれが残ったというようなね、そんなもんが面白かったりするんです。 |
| 聞き手 |
東京の、亡くなられた三遊亭圓生師匠が、『圓生百席』というレコードを出されましたが、あれは全部スタジオ録音なんです。で、録り終わってから全部自分でお聞きになるんですってね。 |
| 米朝 |
そうやろうな、あの人は...。気に入らん所だらけやったと思うわ。 |
| 聞き手 |
「ここをちょっともういっぺん」とか「ここの間をつまんで(短くして)」とかいろんなご注文が出たそうです。 |
| 米朝 |
あのお方はそういう完璧主義みたいな所があってね、ところが「ここん所へこれをはめ込んでくれ」というのは上手いこといかんらしいね。 |
| 聞き手 |
そうですね。声のトーンとか、調子が全然違いますからね。僕らの世界でもそうですね。ナレーションを「ここがおかしいからどっか違うのを持ってこよう」かなと思いますけど、絶対ハマりませんよね。 |
| 米朝 |
らしいね。そういうもんや。 |
| 聞き手 |
クラシックにヘルベルト・フォン・カラヤンという大指揮者がいらっしゃいます。あの方も当然同じ曲を若いとき、中年、晩年と聞き比べが出来たりして、それはファンにとってはありがたいことですから、(落語でも)同じネタが変わっていくのが分かるんで...。 |
| 米朝 |
ほんまにね(笑)ありがたいような、情けないような(笑) |