| 聞き手 |
扇雀から鴈治郎におなりになる時にずっと取材させていただきまして、大阪の新歌舞伎座で『男の花道』をお出しになった。夜、『深川マンボ』を踊りになって、ここで「私は扇雀だったんだよ、そして鴈治郎になるんだよ」というアピールを感じました。 |
| 藤十郎 |
『深川マンボ』やってやれないことはないけれど、やる時期もあるさかい(笑) |
| 聞き手 |
そういうやり方の中に長谷川一夫さんと一緒にお出になったりという影響もおありになったんですか? |
| 藤十郎 |
そりゃありますよ。あれだけお客様を大事になさる方、役者さんと言うのはちょっとないですわ。メイキャップの仕方もね〜。最初の出。どの間で出るか時間がかかるんですよ。上手から出てきて「ちょっと待ってくれ、もういっぺん真ん中から出してくれ」とかね(笑)私の祖父、初代鴈治郎を大崇拝してる人なんですよ。実は祖父のお弟子さんでしたから。「あんた知らんやろけどね、あんたのお爺ちゃん、あんなに出を大事にする人はなかったよ。私それの真似をしてるだけや」と言われたんです。 |
| 聞き手 |
初代(鴈治郎)という人は、芝居が一日一日違ったそうですね。 |
| 藤十郎 |
あれはね無理に変えてるんじゃなくて、すぐ気持ちになり切ってるから毎日同じことなんだけど、微妙に違うんじゃないですか。それは私分かりますわ。『曾根崎心中』のお初というのをね、回数千何回というのは分からんけど、初演と同じ気持ちでね、微妙に違うらしいんだけど本当のその時の気持ちでやれるんですよ。そういう精神は、毎回新しい気持ちでやってるからじゃないでしょうか。 |
| 聞き手 |
今お初の話が出ましたが、昭和28年にお初の役ということはまだ21,2歳でおやりになっていますね。で今、74歳。作品ではお初は19歳。これをずっと続けていかれるという凄さがね... |
| 藤十郎 |
いやまぁ、凄いのかどうか分からんけど、やれと言ってくださるから...。その場になると無理なく動いてしまうのかもしれませんね。 |
| 米朝 |
それはメイキャップして衣装を着けて鳴り物が入ってだんだんその気分になっていくんですかな? |
| 藤十郎 |
ですね〜。ちょっと分かりませんけど、舞台というのは、なんか不思議なとこが(あるんでしょうね)高座もそうでっしゃろね。 |
| 米朝 |
日によっていろいろですけどね。でも、本当にどうしてもその気分になれんという日はありますか? |
| 藤十郎 |
それは、私はないんです。舞台は子供の時と違うて好きですものね。この間も雑誌のインタビューで「生まれ変わったら何におなりになりたいですか?」「やっぱり歌舞伎役者」と言うてしまったんですが(笑) |
| 米朝 |
他のことをもう考えられへんのや。 |
| 藤十郎 |
本当にありがたい。ずいぶんわがままな人生だと思います。この年になって襲名して、まわりの人にずいぶん苦労させて、まわりがよくやってくれるので、本当にありがたいなと感謝してます。 |
| 聞き手 |
お叱りを受けるかもしれませんが、今回の襲名のポスターを拝見いたしますと、どれも嬉しそうなお顔ですよね。 |
| 藤十郎 |
(笑)そうですねん。前の時の襲名よりも(大笑)それは祖父から父に申し訳ない事やと思いますけど、そうなんですよね。 |
| 聞き手 |
まぁ当然、鴈治郎というお名前を(今後)どうするかとかありますけども、それよりも次の若い人を育てていって... |
| 藤十郎 |
それはもう十二分に思ってます。よく言われるんですが「お初という役を人に渡さんとじっと持ってるんでしょ」と・・・。そんなこといっぺんも思ったことない。お初...誰か出てきていっぺん見たいです。だからどんどん出てきてくれてね、そやないとね、自分だけでやってたらね、後誰もせえへんかったら『曾根崎心中』という芝居、お初が死んでしまいますよ。 |
| 聞き手 |
7月2日から26日まで大阪の松竹座で藤十郎の襲名公演がございまして、襲名狂言の『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』以外にも『信州川中島
輝虎配膳』。息子さんとお孫さんの『連獅子』が昼にございまして、夜が仁左衛門さんの『一條大蔵譚』『京鹿子娘道成寺』を藤十郎さんが踊りまして、キリが菊五郎さんの『魚屋宗五郎』。顔合わせがなかなかいい、皆さんが共演されて盛り上げてくれるというのがいいですよね。 |
| 藤十郎 |
まあ、なんというてもお客さんに来てもらわないと続けられへんのですよ。楽しみながら皆さん出てくださるので、きっと盛り上がってくると思います。 |
| 聞き手 |
知らない方がいらっしゃったらお声をかけていただいて。東京は毎月歌舞伎が見られますけど、関西もそうなって欲しいですよね。 |
| 米朝 |
まぁね〜、南座と... |
| 聞き手 |
数は増えたというもののまだまだそういう意味では... |
| 藤十郎 |
いや、まだまだそれは。毎月歌舞伎が打てるようになればよろしいんですけどね〜。 |
| 米朝 |
どうもありがとうございました。 |
| 藤十郎 |
ありがとうございます。 |