| 聞き手 |
米朝さんから見た、イーデス・ハンソンさんというお方のその当時の印象は? |
| 米朝 |
ちょっとも国籍を考えさせなんだね。本当に日本人と喋ってるような、普通の気持ちでものが言えたし...。私そういうこだわりはなかったなぁ〜。不思議な人やったと思う。 |
| 聞き手 |
最も日本人らしい外国人かも... |
| 米朝 |
そうや。その時分の日本人よりも日本人らしかったかも分からん。 |
| 聞き手 |
当時、その大阪弁を喋るのに、風貌はいかにも外国の方ですからね。その、いい意味での違和感が印象に残りますよね。 |
| 米朝 |
それはね、始めは多少それを思ったけど、途中から全然違和感を感じなくなってしもうた、この人には。 |
| イーデス |
はぁ〜、そこが抜けてるかもしれないけど、自分の顔見てへんでしょ、だからまわりと違う顔してるとは思わないわけよね(笑)違うのは分かってるよ、分かってるけどその時の感覚としては思ったことないし、あくまでも一緒にこの仕事してるから、その仕事を理解してその中でどういう風にすればいいか、というそっちの方に神経が行くから、分からない時は説明してもらうし、「え!!そんなの違うわ、なんで!!」とか、違うのあたりまえやっていう...。違ったって当然やからその違いを分かる... |
| 米朝 |
そういう質問もあんまりせなんだしね〜... |
| イーデス |
...ように見て覚える。 |
| 米朝 |
新聞なんかいつから読むようになったのかしら... |
| イーデス |
あ〜、いつからとかそういうの分からへんねん。少しずつ読めるようになってくる。去年の今時分より、今は読めてる、とか(笑) |
| 米朝 |
日本の文章を読むんでも、必要がどんどん出てくるさかいね、それに対応してるうちにいつの間にやらという、そういうことやったんかな? |
| イーデス |
いや、台本は絶対にね、他の外国のタレントはローマ字に書き直したりしてたけど、私は直したことない。もちろん読めない字ってあるけど、それ調べて振仮名つけたらいいし、ローマ字にしたら全然違う。まったくその字から受ける雰囲気っていうかね、感触っていうか(笑) |
| 米朝 |
そうやと思う。分からんでも日本の台本のままで見てる方が... |
| イーデス |
うん。だから頑張って覚えたらいいわけだから...。そんでやってるうちに身に付いてくるでしょ。「この前、この字は引っかかったけど今度はこの字は知ってるわ」という。そういうふうにしてた。 |
| 聞き手 |
素晴らしいですね。ハンソンさんが米朝師匠の落語を、実際にお聴きになったのは、お仕事されてすぐですか? |
| イーデス |
すぐでもないですね。 |
| 聞き手 |
どうですか、落語という芸能はアメリカには当然ありませんわね、全部一人で演じてしまう。どうでしたか、ご覧になって。 |
| 米朝 |
対話で運んでいくからね、だいたいが。 |
| イーデス |
そういうのって凄く好きですよ。見えるんですよ、見えてくる。その場面が。それは凄いなと思った。 |
| 米朝 |
そういう意味で、あんまり世界に類のない芸やと私は思ってるんです。 |
| 聞き手 |
それがまたハンソンさんにも見えてくるというのは、ハンソンさんも凄いですよね。 |
| 米朝 |
まぁ〜、それはね、上手に聴いてくれはったんかな... |
| イーデス |
いや、そういうふうに出来てるんですよ。ものすごく言葉を選んで作られた... |
| 米朝 |
ちょっとした仕草、表情。それしかないんやからね。メイキャップもコスチュームもなんにもあらへんのやから。 |
| イーデス |
あのね、よく日本語って曖昧で、全然論理的じゃない。例えば「科学的な話をするのに、日本語は向いてない」みたいなこと言うけど、決してそんなことない。日本語はちゃんと使えば何でも伝えられると、私は思うんですよ。もちろん落語で科学的な内容を伝えるわけじゃないんだけども、それぐらい言葉を選んで作り上げてると思うんですよ。 |
| 米朝 |
本当に言葉だけが頼りだから、言葉は選んで、こだわってるはずですよ。 |
| イーデス |
あの、いい加減じゃないのね。キチッとした言葉と、もちろん言葉だけじゃない、間とか、そういうのも両方あってやけども、理屈っぽくなく普通の話という雰囲気で、きっちり言葉を選んで作ったものだから、これは凄いものやと思うね。 |
| 聞き手 |
面白いというか、笑う所というのは同じですか? |
| 米朝 |
日常の会話でも同じですよ... |
| イーデス |
そうやね。今聞こうとしてるのは、例えば外国映画見に行って、言葉聞いてこっちがゲラゲラ笑うのに、字幕読んでる日本人は後から笑うという、そういう状態なのかということでしょ。そういうずれはない...ですね。 |
| 米朝 |
意識したことは私もありませんね。 |
| イーデス |
おかしいもんはおかしいよ。 |
| 米朝 |
(笑)そりゃそうや。 |
| イーデス |
なんかチョットした言い回しで、これ、落ちでもなんでもなく、おかしいって言う、なんかあるやん。その(以前に)...スタジオに入ってなんか時間があってごちゃごちゃ関係ないこと話してて、いろんな人の役割を決めて、「これしなさい、あんたはあれしなさい」って言うて、それで「あんたは牡丹や、そこで咲いてなさい」そんななんか(笑)それがあたしはおかしい(笑) |
| 米朝 |
あれはね、獅子の踊りをやったんや。それで牡丹の役があるんやね。 |
| 聞き手 |
牡丹に唐獅子ですからね。 |
| イーデス |
あ、そうそう。 |
| 米朝 |
そんで「おまはん、そこで咲いてたらええがな」とか何とか。 |
| イーデス |
それ聞いて、なんだかおかしいもん。しばらくはもう立ち直れなかった(笑)おかしいと思わん? |
| 聞き手 |
イヤイヤ、おかしいと思いますけど... |
| イーデス |
それは、今伝わってない・・・?(笑) |
| 聞き手 |
思いますけど、それがほんまにおかしいと思うハンソンさんが、凄いなぁ〜と思って。 |
| イーデス |
ほんまに...忘れへんわ、あれ(笑) |