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〜今週のよもやま噺も、文楽太夫の第一人者、竹本綱大夫さんとの鼎談をお届けします. 聞き手はABCテレビのプロデューサー市川寿憲です。〜
聞き手  綱大夫師匠も落語もお好きであったし、芸の勉強やと思ってよくお聞きになったりしたんですよね。
綱大夫  米朝師匠のことを「兄貴さん、兄貴さん」とね...
米朝  そない言うてくれはる...それ以外の所でお付き合いを...(笑)
聞き手  それは「ちょっと(飲みに)行こか」と言う...
米朝  たっぷりやね。
綱大夫  昔はたっぷりもたっぷり、お互いにたっぷり...
聞き手  やっぱり酒の肴は芸談ですか?
米朝  自然にそうなってしまいまんな。でまた私もそんな話、好きやさかいね。食い下がってでも聞きたい方やから...。今、若い人はどれぐらい入ってきます?
綱大夫  研修生がね、2〜3人入ったりしますから、個人で門を叩いてというのは少なくなりましたですな〜。
聞き手  国立劇場に研修生制度というのがありますね。文楽も太夫、三味線、人形と。大学をお出になったり、高校を出た方がそこにお入りになって2年ほど研修をされて、適正を判断されて、太夫や三味線、人形と振り分けられるんですね。
綱大夫  そうです。ま、本人の希望も聞いてのうえで。
米朝  三味線なんか本当に若いほどよろしいやろな。
綱大夫  そうですな。無理やと思いますわ。
米朝  15〜6(歳)になってからではね。
綱大夫  15〜6ならまだええ方で、高校を卒業したり、大学を中退しましたって言うのは、これから三味線を持つことから教えたら大変です(笑)
米朝  三味線弾きは、三味線が手や血管にならなあかんと言いますさかいな。
聞き手  今月、(鶴澤)燕二郎さんが燕三(えんざ)をお継ぎになりますね。そういう意味では研修生の方も大きな位置を占めるようになってるわけですね。
綱大夫  そうですな、人形さんなんかほとんどそうですね。
米朝  あの〜、西洋の人形と共通点あるかしら。
綱大夫  あんな大きなのはあれしませんやろな。
米朝  文楽の人形は三人遣いやさかいね。
綱大夫  重たいですな、あれ。天地会で...
聞き手  そんな重いですか。あれ左手で頭(かしら)を持って、右手で人形の右手を持つんですね。でもそういう天地会で役を替わって体験するとまた違うものが見えて来ますか?
綱大夫  ええことやと思うんです。太夫がおじいさんを語るのは、どんなに苦労するかと私ら思うてましたけど、その天地会で(人形を)持たされておばあさんが出てくるのに、スススと出て来たんではおばあさんになれしませんから。そういう所の苦労というのはそれぞれ三者三様で...
米朝  ありまんな。いろいろやらすのはええことですな。
綱大夫  三味線でもね、私三味線好きやからね、若い時分一度バチでトーンと弾いたら糸で跳ね返されてバチが飛びそうになってね。そんな苦労はね...
聞き手  やっぱりやってみないと分かりませんね。でも文楽は修行が10年とか20年とか30年とか、法外な年数かけてやっと一人前ということですよね。
米朝  それはね、その道のある段階まで行こうと思うたら、やっぱりそれはやってみな分かりまへんわな。

聞き手  今は九代目綱大夫を襲名されているわけですが、昭和38年に五代目織大夫をお継ぎになった時にお父様が合三味線になられたわけですね。その時は想像以上に厳しく...
綱大夫  はい、また厳しさがね...。素で稽古するのは「張り扇」ですな。うちの師匠は張り扇で、口三味線でやってました。ほなら父の言うのには「あの稽古は力のある者は取れるけれども、お前らみたいな者は...」
米朝  (笑)取れんと。
綱大夫  ほんまの調子、舞台と同じ調子にせないかんと。稽古の調子はちょっと低いんです。舞台の高い調子でなんべんも稽古させられましたから、親父も変わって来たなと思いましたですね。
聞き手  平成8年に「綱大夫」をお継ぎになった時に息子さんの(鶴澤)清二郎さんに三味線を(弾かせる)ということでしたが、今度は伝えていく立場になれてのご苦労は?
綱大夫  私は三味線弾きとは違いますので、こう弾けというのは口で言うわけですね。(竹澤彌七)師匠が弾いてくれはったときはこんな感じやったとか、親父が弾きはったときはこうやった、というふうな教え方しか(できませでした)息子も難しかったと思いますわ。この頃はね...
米朝  親父の言ってることが分かるようになってくるんでっしゃろな〜。
聞き手  米朝師匠も息子さんが噺家ですけれど。
米朝  倅には稽古しまへんのや。
聞き手  そうですか。基礎の稽古はされたんですか?
米朝  ほんのちょっとだけですわ。稽古をまかした奴に悪いからこっちは何も言いしません。腹の中で思うことあってもね。
綱大夫  うちでもそうです。うちの父が(私が)太夫になった時に始めはちょっとお稽古してくれたこともあったんですけども、「わしが稽古したって言うなよ」と。皆私に触らんようになる。「言うたらお前が損やで」
米朝  自分が力入れて教えた奴に何か言われるのはいややからね。

聞き手  声というのはお稽古していくうちに変わっていくんですか?(例えば)浪花節は早朝に大きな声を出して喉を潰す方がええのかとか...
綱大夫  声帯は潰したらいかんってうちの師匠は言いました。自然体で、毎日の訓練やと言います。
聞き手  太夫さんは着物を着る前に腹巻きを巻くんですね。
綱大夫  きつくね。一説には脱腸防止のためにね。
聞き手  あの腹帯をぐっと巻いて、砂袋置いて、べたっとは座ってないんですものね。
綱大夫  腰にぐっと力を入れるためにね(座らない)。砂袋も襟口を乱さんためにね。あれは襦袢と紋付との間へ入れるもんです。あれで力が入るということはないと思います(笑)
聞き手  芸で、「息(イキ)を詰める」というのがありますね、古典芸能は特に。あれは大事なんでしょうね。
綱大夫  これはね、一番(大事)落語も私ね(そう思います)間が変わる所がね。「間」は魔術の「魔」やというね。
米朝  間というのはもう...説明出来へんけど、「間」やね。日本の芸は皆、「間」やね。
聞き手  お二方とも全部一人で演じられるわけですよね。その大変さは?
米朝  あまり意識したらあかんのやろと思うんやけどね。やっぱり何十年やってたらな(笑)自然に出来ますわいなそら(笑)

聞き手  今度お孫さんが太夫になるかもしれないというのが楽しみになんですね。
綱大夫  せやけどこの頃「学校、学校」と嫁が言うてね(笑)ま、なってもらいたいんですけど。
聞き手  それでいくとおじいさん、お父さん、師匠、息子さん、お孫さんの五代ですね。五代というのないんじゃないですか?
綱大夫  不思議なくらい文楽は我が子には継がさしませんさかいね。
米朝  しんどいめ(思い)して銭にならんのを経験してるさかい(笑)
聞き手  そうですか?
綱大夫  そうですわ。もうね、父が反対したんはこれやな、と今、思うて(笑)

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